自身もコロナ感染、酒の提供禁止…タイに出店、博多居酒屋の奮闘

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本食店の撤退が相次ぐタイで、福岡市から出店した居酒屋「照(てら)」が奮闘している。感染拡大や営業禁止措置に翻弄(ほんろう)され続け、店長の内川智貴さん(31)自身も4月に検査で陽性となった。厳しい環境下、店や雇用をどう維持するか模索している。

 タイでは2020年1月、中国以外では初の新型コロナ感染者が確認された。「照」は同3月、首都バンコクに開店を計画したが、感染者が急増。政府が緊急事態宣言を出し、店内飲食やアルコール提供が一時禁止になったため延期した。

 感染が小康状態になった20年7月にようやく開店。もつ鍋や水炊きなどこだわりの福岡の味が人気を呼び、12月末に2店舗目を出店した。だが、この時期に再び感染者が急増し、店内飲酒が禁止された。3店舗目となるバーの出店を予定した今年4月には感染の第3波が到来し、またも開業延期を余儀なくされた。

 4月末には、従業員の家族が感染したため全従業員18人とともに検査を受けると、内川さんを含む4人の感染が判明した。隔離先となった病院で準備されたのは硬いベッドだけで布団やせっけんもない。食事は冷たく、同部屋のタイ人も避けるほど粗末だった。

 タイでは飲食業界に関わる相当数の日本人が感染していたが、風評被害を恐れて誰も公表しなかった。「対策をしても感染する。隠すより前向きに教訓や体験を共有しよう」。幸い症状はなかった。会員制交流サイトで感染の事実を公表し、病院内の様子などを投稿すると多くの激励が寄せられた。自宅でも調理しやすいよう鍋の具材を細かく小分けにして配送する宅配サービスを通じて「この店はしっかりしていると顧客の信頼を得ることができていた」と実感した。

 タイ政府は5月末に店内飲食を時間限定で解禁したが、座席数の25%までで、アルコール提供は禁止のまま。バンコクの日本食店経営者有志は今月から「既に廃業や倒産した店が多数に上っている」として店内飲酒解禁などを政府に求める署名運動を始めている。

 「照」も2店舗中、営業は1店舗。バーの開業はめどが立たない。内川さんは「日本ほど行政の支援はなく経営は厳しい」と話す一方「利益が大幅に減ったといってもタイ人に比べると、日本人経営者の収入は高く、どれほどぜいたくだったかと感じる。前を向いてできることをやり続けたい」。内川さんは従業員を一人も解雇せず、自らの給料を返上している。

(バンコク川合秀紀)

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