切り札と言われても…ワクチン接種を迷うワケ 識者「正確な情報を」

 新型コロナウイルスのワクチン接種が急ピッチで進む中、接種に抵抗感を示す人がいる。副反応への不安や政府への不信など理由はさまざまだが、若い人ほどその傾向が強いという調査結果もある。政府はワクチンをコロナ対策の「切り札」と位置付け、月内には職場や大学での接種も始まる。心理学の専門家は情報不足に一因があるとして「接種を広めるには政府やマスコミが丁寧に正確な情報を発信し続けることが重要だ」と訴える。

 「インフルエンザですら予防接種しなくても感染したことがない。コロナだって必要ない」。福岡市南区の自営業男性(36)は言い切った。感染拡大の「第4波」のピークは越え、自身も周囲も危機感は薄れてきた。健康に絶対の自信があるわけではないが、接種には抵抗を感じる。

 同市の女子大学生(23)はもともとワクチンに関心はなかった。ところが、会員制交流サイト(SNS)で「基礎疾患がない20代女性が接種後に死亡したケースがある」という情報に触れ、急に怖くなった。「若い世代はワクチンを打っても大丈夫だと思っていたけど、安心できない」

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 「若い人ほど接種にメリットを感じられていない」。筑波大の原田隆之教授(臨床心理学)は指摘する。4月、全国の575人に接種の意向を聞いたところ、60代以上は84・2%が「絶対打つ」「多分打つ」と答えたが、年代が下がるごとに減少。20代は30・8%にとどまった。

 実際、福岡市内で10~30代の男女に取材したところ「健康だから必要ない」と答える人が少なくなかった。原田教授は「ワクチンに望みを託す高齢者とは違い、重症化のリスクが低いといわれてきた若い世代が接種を敬遠するのは自然なことだ」と分析する。

 先行する米国では、こうした「忌避感情」の克服のため、食料品や米大リーグの観戦チケット、高額の宝くじといった特典を設けた。原田教授は「特典は日本でも効果的」としつつも「若い人も『絶対に打たない』と言っているのではなく、迷っている人が多い。メリットとリスクに関する正確な情報があれば接種したいという人は増えるはずだ」と指摘した。

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 厚生労働省によると、米ファイザー製で重いアレルギー反応「アナフィラキシー」が起きた割合は接種100万回に13件。米モデルナ製も5月末までの約9万回で、かゆみなど副反応の疑いがあったのは17件だった。久留米大医学部の溝口充志教授(免疫学)は「自然に感染して重症化するリスクよりもはるかに低い。感染も予防できるコロナワクチンは極めて有効」と語る。

 ただ、厚労省ホームページでは、今年2月17日から今月4日までに報告された接種後の死亡は196件。接種との因果関係は、現在評価中の57件以外の全てで「情報不足により評価不能」とされている。福岡県久留米市の会社役員(58)は「予防接種で命を落としたら元も子もない。政府への不信感は強い」。中高年層にも拒否反応はある。

 政府はワクチンを推奨する一方、接種はあくまで自己判断との立場。溝口教授は「人口の60%以上が接種するか感染すれば集団免疫が獲得できるため、全員が接種する必要はない」とした上で「若くても基礎疾患があり体格指数(BMI)が23以上であれば重症化リスクは高い。正確な情報を基に、自身に利益が大きいと思える方を選んでほしい」としている。 (布谷真基、高田佳典、才木希)

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