宣言解除前から増える人出 五輪中に第5波、政府の不安

 福岡県など10都道府県に出ている新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は20日に期限を迎える。大半の地域で解除される方向だが、東京では既に人の流れが増えており、解除可否の鍵を握る東京都の新規感染者数は減少傾向が鈍化している。感染者数が下がりきらない中での解除は再び感染拡大を招き、来月以降の東京五輪・パラリンピック開催期間中の「第5波」到来も懸念されている。

 都の新規感染者数は14日は209人だったが、12日は約1カ月ぶりに前の週の同じ曜日より増加した。都内の繁華街では午後8時以降も営業を続け、酒を出す店が増えてきた。インドで最初に確認され、感染力がさらに強く重症化しやすい新たな変異株も市中に広まっている。政府高官は「昼も夜も人出が増えている東京(の対処)は難しい」と漏らす。

 内閣府の調査によると、国民がコロナ対策のきっかけとして重視する情報は、「感染者数の増加」(56・9%)が最も多く、「病床の逼迫(ひっぱく)」(35・5%)▽「医療関係者からの呼び掛け」(25・3%)▽「死亡者数の増加」(23・1%)と続く。いずれも年齢層が高いほど高率になっている。

 東京都医学総合研究所のデータでも、新規感染者数が東京や大阪で1日千人を超えたり、急増したりしている時には、人出が減る傾向にある。逆に、新規感染者数が東京や大阪で200~400人台に落ち着けば、人出は下げ止まり、上昇曲線を描くようになる。

 こうした人々の行動意識を踏まえ政府は、新規感染者数が減ってきた段階で、病床使用率の高まりなどを強調して危機感を訴え掛けてきた。だが「宣言疲れ」もあり、東京の人出は5月の大型連休明けから右肩上がりとなり、感染者数の下げ止まりにつながっているとみられる。

 政府にとってはもう一つ、頭の痛い問題がある。

 来月23日に観客を入れた形での東京五輪開幕を念頭に置く政府だが、このままの人出が続けばリバウンド(再拡大)を招き、東京五輪の「無観客」を求める世論や専門家の主張が高まりかねない。

 東京五輪の感染対策では、会場や選手村などの対策は進んでいるが、日本国内での移動については有効な手だてを見いだせていない。専門家は五輪期間中の感染拡大「第5波」を警戒。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は近く、無観客を含めた開催を政府に提言する方針。

 一方、政府は宣言を解除した東京などには、まん延防止等重点措置の適用を検討している。政府高官は「物理的に人の移動を制限するのはこれぐらいしかない」とため息をつく。

(河合仁志)

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