「『学級崩壊』の中で起こるいじめ」15歳の怒り

復刻連載・冷めた視線-学級崩壊の現場から<6>

 小学6年生のマユミは2月上旬の算数の授業中、暇つぶしにクラスメートのタケシと担任の女性教師とのやり取りをノートの端にメモしていた。大筋はこうだ。

 -教師に指されたタケシが、質問の意図が分からずに立ったまま黙っていると…。

 教師「黙りこくって失礼よね。直しなさい、その性格。言うとね、言わんとね。すごい人だね。バカじゃなかろうか」

 タケシ「分かりません」

 教師「何でこんなに待ってから『分かりません』なの。みんなに謝りなさい。謝りなさい。謝りなさい。謝りなさい!」

 タケシ「すみませんでした」

 教師「何が! 何が!」

 ほかの男子「先生、21分たったよ」

 教師「すごい。すごすぎるよ。あんたは(ため息)」

   ×   ×

 このクラスは、授業が成り立たない「学級崩壊」までには至っていない。授業中はみんな大人しくしている。でも、本当はクラス全員が教師の話を聞いていないだけ。教師の口癖の「バカじゃなかろうか」を授業中に何回言うか、「正」の字を書いて数えている子もいる。

 そんな教室の様子を、マユミは家に帰って母親におもしろがって話す。

 「先生の話してる意味がさっぱり分からん。それに、いっつもヒステリー。ちょっと怒らせるとキーキーうるさいから、みんな適当に黙ってるの」

   ×   ×

 荒れた教室の中で、子どもたちは先生や授業についてどう思っているのだろうか。他の小学校で学級崩壊に直面している6年生の男子に尋ねた。

 「何にも言いたくない。話しても担任が辞めてくれるわけじゃないから」

 放課後、街で見かけた小学生にも聞いてみた。

 「たまにムシャクシャして先生の言うことを聞きたくなくなる。そういうときは席に座ってるけど、全然話を聞いてない」(4年男子)「先生は家で嫌なことがあると、ぼくらに八つ当たりするから嫌い」(6年男子)「算数の授業が分からん。家で大学生のお兄ちゃんに教えてもらうとすぐ分かるのに」(5年女子)「塾の先生の方が、教え方が上手だから好き」(6年女子)「先生はむかつくけど、反抗しようとは思わん。もうすぐ卒業だし、反抗してもいいことない」(6年男子)…。

 「先生が好き」との返事もあったが、冷めた言葉が多かった。

   ×   ×

 「中学2年の1年間は私にとって、とても無駄な1年間だった。『学級崩壊』の中で起こるいじめ。とても悔しかった…」

 中学3年のアキ(15)から、取材班にファクスが届いた。丁寧に書かれた文面には、中学2年のときに体験した学級崩壊への怒りがつづられていた。

 ある日曜日、アキに会った。制服姿で現れたアキは礼儀正しい女の子だった。

 彼女が初めて「授業にならない授業」を経験したのは、2年生になったばかりのころだった。

 クラスは、学年で一番怖い先生の授業のときだけは静かだが、それ以外、特に担任の松坂俊之先生の授業になると騒がしかった。リーダー格の男子5人が立ち歩き、消しゴムを投げ合う。先生が怒り出すと、からかって笑う。女子は好き勝手におしゃべりを始める。

 「静かにしようよ」。アキは思わず声を上げた。それ以後、クラスメートのいじめや無視のターゲットになった。

   ×   ×

 松坂先生に呼び出された。「いじめについて話を聞かせてくれ」。アキは口を開かなかった。クラスメート同様、先生が嫌いだった。

 「何だか頼りなくてうじうじしてる。さむいオヤジギャグを連発するし、古い考えを無理強いして生徒の話を聞こうともしない。それに、私たちの意見を無理やりねじ曲げる…」

 黙り込むアキに、先生は「じゃあ、他の先生にも話すなよ」と迫った。

 松坂先生はよく学校を休むようになり、自習が増えた。「荒れ」は、2年生の終わりまで続いた。

 今のクラスはいじめもなく、楽しい。担任は松坂先生と同じ30代の男性だが、よく自分たちを見ていてくれるし、コミュニケーションをとるのも上手だという。

 「前の担任は、昔の先生像を追いかけていたんだと思う。今の私たちが求めているのは、対等な立場で話せる友達のような先生なのに」(文中仮名)

   ◇   ◇

 ◆1990年代後半から問題になった「学級崩壊」。あれから20年余り、教育現場はどう変わったのか、変わっていないのか。当時の連載を読み返し、教育の今を考えるヒントにしてみませんか。

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