米ロ首脳初会談、遠い関係改善 サイバー攻撃、人権…対立根深く

 【ワシントン金子渡】バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は16日、スイス・ジュネーブで初めて会談し、新たな核軍縮の枠組み構築に向けて2国間対話を始めることで合意した。「冷戦後最悪」と言われる米ロ関係の改善に向けた一歩となったが、サイバー攻撃や人権問題の議論は平行線に終わり、対立の根深さを浮き彫りにした。

 「トランプ前大統領とは全く違う人」「経験豊かな政治家」。会談後の記者会見で、プーチン氏はバイデン氏をこう持ち上げてみせた。かつてバイデン氏から「人殺し」と評されたことについては「もはや気にしていない」と語った。

 一方のバイデン氏も「首脳同士が直接対話することに代わるものはない」と初会談の意義を強調した。当初は非難の応酬も予想されたが、会談を終えた両首脳は互いを評価し合い、和やかなムードを演出した。

 しかし、会談自体は双方の思惑がぶつかり合った。米国内の石油パイプラインが攻撃され停止するなどサイバー攻撃について、バイデン氏は懸念を突き付けたが、プーチン氏はロシア政府の関与を否定。逆にロシアこそ米国から攻撃を受けていると開き直った。

 ロシアの反体制派ナワリヌイ氏への弾圧問題に関するバイデン氏の警告にも、プーチン氏は耳を貸さず、譲歩する姿勢を見せなかった。

 会談では、核兵器に関する新戦略兵器削減条約(新START)の5年後の失効を見据え、核軍縮やリスク軽減措置を話し合う「戦略的安定対話」の開始で合意した。米ロ関係に詳しい米カトリック大のマイケル・キメッジ教授は「将来に向けて共通のアジェンダになることを示唆する良い方法だ」と評価するが、具体的な軍縮措置は今後の協議次第。「元々、首脳会談への期待値はかなり低い」(キメッジ教授)だけに、対話継続という最低限の合意を何とかまとめた格好だ。

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 大きな歩み寄りが期待できない中、バイデン氏があえてプーチン氏との直接対話に臨んだのは、別の思惑がある。対立を深める中国への揺さぶりだ。

 バイデン氏は米ロ首脳会談に先立ち、先進7カ国首脳会議(G7サミット)をはじめ、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)との首脳会談を精力的にこなし「民主主義陣営」の結束を訴えた。特にG7サミットでは、共同声明に台湾海峡の平和と安定の重要性を初めて明記。新型コロナウイルス対策として途上国などへの10億回分のワクチン供与や、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するインフラ支援策を打ち出した。

 バイデン氏は台頭著しい中国を「唯一の競争相手」と位置付けており、軍事、経済両面で対抗する構え。中国との対立に集中するため、ロシアとこれ以上争い「二正面作戦」となるのは避けたいのが本音だ。

 バイデン氏は会談後「プーチン氏が最も望まないのは米国との冷戦だろう」と語った。国際社会での中国の影響力拡大は、大国の座を維持したいロシアにとって歓迎一辺倒とはいかない。中国を抑え込むには米ロができる分野で協調した方が得策-。バイデン氏の言葉には、こんなロシアへの秋波もにじむ。

 ただ、プーチン氏には米国の警戒感を逆手に取って中国に接近し、国際社会での影響力を強めようとする戦略もうかがえる。米国の狙い通りに中ロ間にくさびを打てるかは不透明だ。主要国(G8)から排除されたロシアにとって米国と渡り合う姿が注目されるだけでも成果と言える。大国の思惑が絡み合い、米ロの関係改善は道筋が見えない。

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