吃音ある女性を勇気づけた米映画 「理解広げたい」翻訳と広報志願

 吃音(きつおん)のある人々の苦悩や成長を描く米国のドキュメンタリー映画を日本で広めようと尽力する人がいる。東京都目黒区の主婦奥村安莉沙さん(29)だ。自身も吃音があり、幼い頃からいじめや偏見に苦しんだ。「誰にも同じ経験をさせたくない」。現在は当事者の支援活動を行う奥村さんはインターネット上で作品を見て感銘を受け、映画会社に日本語訳と広報を志願。仲間とともに奔走している。

 作品名は「マイ・ビューティフル・スタッター」(私の美しい吃音)。米国の吃音当事者の団体「SAY(セイ)」が主催するキャンプに参加した子どもたちがいじめや暴力を受けたことなど悩みを互いに打ち明け、友情を深める中で自己肯定感を取り戻す様子を映し出す。米カリフォルニア州の映画会社「ビリーブ リミテッド」が製作し、今年3月にテレビで放映、ネット上でも公開された。

 奥村さんは公開直後に視聴。「あなたの声は美しい。ありのままでいい」とSAYの創設者が子どもたちに語りかける場面に涙があふれた。

 「この映画は吃音への理解がまだ浅い日本の社会を変える力がある」。すぐに同社が募集する日本語訳のボランティアに応募した。オーストラリアやカナダに滞在して身に付けた英語力を生かし、90分の作品を1カ月近く、計約90時間かけて翻訳した。

 日本での広報も申し出た。作品の公式サイトを日本語訳し、全国の吃音当事者約20人と協力してテレビ局や新聞社など約40社に手紙を送った。

 奥村さんは2歳ごろに吃音の症状が現れた。小学校の国語の朗読では何度も言葉に詰まり、同級生は耳をふさいでからかった。中学では自己紹介で名前を言うのに約10分かかった。周囲から無視され、まねされた。症状は今もある。

 2年前からネットで発話訓練の映像を公開したり、吃音当事者同士が互いを認識できる腕輪を自作したりする活動を行っている。「この映画を通じて吃音への理解を広げ、当事者が生きやすい社会にしたい」と話した。

 (梅本邦明)

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 日本語字幕版は動画共有サイト「Vimeo(ヴィメオ)」で配信中。購入1850円、レンタル870円。

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【ワードボックス】吃音

 言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりする症状で、100人に1人いるとされる。頭の中で話す内容は浮かんでいるが、呼吸や声帯、口の動きが合わず、音を出すタイミングがちぐはぐになる。遺伝的要因などが影響すると考えられる。多くは2~5歳で発症し、自然に回復する人もいる。訓練により症状は一定程度軽減できる。

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