「消費税5%」踏み込んでも煮え切らぬ枝野氏のトラウマ

 秋までにある次期衆院選の争点になるか注目される消費税減税を巡り、立憲民主党が迷走している。枝野幸男代表が衆院本会議で、新型コロナウイルス禍の経済対策として、消費税率5%への時限的な引き下げに初めて言及。しかし直後の記者団の取材には、公約に掲げることに消極的な姿勢を示した。「野党共闘の旗印にすべきだ」「実現可能性が低いから公約にできない」-。党内も意見が割れている。なぜ、こんな事態に陥ったのか。

 枝野氏が消費税減税を打ち出したのは、15日にあった内閣不信任決議案提出の趣旨説明。「国会と国民の理解を得ながら、税率5%への時限的な消費税減税を目指す」と表明した。

 ただ、枝野氏は本会議直後に集まった記者団に「選挙公約ではない」と語り、真意を尋ねても「(趣旨説明の原稿を)読んでいただいた通りだ」と詳しい説明を拒否。「一部分だけ切り取られて扱われても困る」とも述べ、記者団をけん制した。

 枝野氏の一連のあいまいな発言に、党内は混乱した。消費税減税が持論の江田憲司代表代行は翌16日に緊急会見を開き、「代表が本会議場の正式な場で言ったのだから、当然、政権公約に反映させる」と強調。一方、同じ日に続いて会見した福山哲郎幹事長は、立民が次期衆院選で仮に政権を取ったとしても参議院で少数の状態が続くことを挙げて「すぐに実現できないので、選挙公約にはなりにくい」と枝野氏の思いを代弁し、江田氏の主張を打ち消した。

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 枝野氏は元来、消費税減税に慎重な姿勢を取ってきた。5月発売の著書でも「飲食店や観光関連などコロナ禍の影響を大きく受けた業種には、十分な恩恵が届かない可能性がある」と、コロナ禍の直接的な経済対策としての効果を否定した。

 持論の転換とも取れる発言をしたのは、衆院選が近づき、消費税減税を唱える共産、国民民主両党との共同歩調を求める党内外の圧力が高まったからだ。

 れいわ新選組の山本太郎代表と立民など超党派の議員でつくる「消費税減税研究会」は5月末、消費税率5%への引き下げを求める提言を発表。共同会長を務める立民の馬淵澄夫元国土交通相は「野党が旗印として減税を掲げれば結集して総選挙に臨むことができ、大きな成果が得られる」と訴えた。

 これに呼応し、減税に慎重な立民議員の間でも、次期衆院選を見据え「将来的に手足を縛られない『コロナ禍の時限的減税』なら言ってもいい」(中堅)と容認する雰囲気が広がった。

 枝野氏は不快感を示す半面、「次第に追い込まれていった」(党内の閣僚経験者)という。

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 「消費税率5%」に踏み込んだものの、公約化には煮え切らない態度の枝野氏。背景には、立民を支援する連合が消費税減税に否定的なことに加えて、旧民主党政権時代のトラウマがあるとみられる。

 米軍普天間飛行場の沖縄県外移設や「埋蔵金」活用による財源捻出など、2009年の政権交代選挙で掲げた目玉政策が破綻。国民の失望を買い、陥落した。

 ある党幹部は「実現が難しいことを夢見させてはいけない。政権時代の教訓だ」。別の幹部は消費税減税の争点化によって財源論に火が付くことを警戒。「旧民主党は『言い切ること』で失敗した」と振り返り、枝野氏の「あいまい戦術」に理解を示す。

 だが、消費税政策は国民の生活に密着する基本政策だ。枝野氏はその説明姿勢こそ、有権者の判断材料になると肝に銘じるべきだ。

 (川口安子)

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