豪雨被災地、仮住まいの孤立深まる コロナで交流会中止、訪問制限

 昨年7月の熊本豪雨の被災地では、仮設住宅や公営住宅でなお被災者3749人(5月末現在)が仮住まいを余儀なくされている。高齢者らの健康悪化や孤独死を防ごうと、自治体やボランティアによる交流会や訪問活動が続けられてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、交流会はたびたび中止に。密を恐れて参加しない人も多く、被災者が孤立するリスクは従来の災害以上に高まっている。

 「今まで培ってきたものが、一瞬ですべて壊れた。気分は毎日、曇天ですよ」。球磨川の氾濫で自宅が全壊し、熊本県球磨村の仮設団地で1人暮らしする山口道人さん(89)がため息をついた。自宅隣で長年続けてきたオーダーメードの紳士服店は屋根まで泥水に漬かり、再建を諦めた。

 10年ほど前に妻に先立たれ、同居していた息子夫婦は豪雨後、別のアパートで暮らす。以前は近所の友人と毎朝のようにグラウンドゴルフを楽しんでいたが、被災後は散り散りに。グラウンドには今、仮設住宅が立ち並ぶ。

 愛犬との散歩以外は、狭いワンルームでテレビを見て過ごすことが多い。「ここには楽しみがない。交流会に来るのは女性ばかりだし、コロナも怖いしね」

 県によると、5月末現在、建設型仮設住宅で1793人が生活し、民間の賃貸物件を自治体が借り受ける「みなし仮設」には1613人が入居。公営住宅にも343人が身を寄せる。被災した自宅に住み続ける「在宅被災者」も含め、高齢者や身体障害者などの見守りが必要な世帯は7市町村で計5245世帯(2月15日現在)いるという。

 各自治体の社会福祉協議会は昨秋、被災者の見守りを担う「地域支え合いセンター」を設置。対象世帯を訪問し、交流会を開催してきた。だが、新型コロナ感染が拡大した今年の正月前後や5月中は、計約2カ月にわたって交流会の中止を余儀なくされた。

 県内の感染者が1桁台に収まる日が増えた今月。見守り対象が約700世帯ある球磨村のセンターは、仮設団地の集会施設で交流会を再開した。17日は14人が参加。検温や消毒の後、歌やお手玉を組み合わせた運動や雑談を楽しんだが、男性参加者は1人だけ。同センター主任生活支援相談員の槻木正剛さん(33)は「男性も足を運びやすいように飲み会なども企画したいが、当分は無理。コミュニティー形成が思うように進まない」と打ち明ける。

 訪問活動は感染拡大期も続けていたが、村では感染リスクを抑えるため「玄関先で短時間、部屋の中には招かれても入らない」とルールを決めている。ボランティア団体などが主催する交流会も今は断っている。

 2016年の熊本地震では、仮設住宅や災害公営住宅で35人が孤独死した。豪雨被災者の孤独死は確認されていないが、槻木さんは「被災者が孤立しやすい状況にある」と危機感を募らせる。

 「被災者に寄り添いたい思いの一方、自分たちがウイルスを持ち込むかもしれないとの不安もある」とジレンマに悩む槻木さん。人と人との接触が制限されるコロナ禍で、被災者をどう見守っていくか。支える側も揺れている。 (中村太郎)

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