固定資産税、自治体で相次ぐ算定ミス 複雑な制度背景? 専門家「多数埋もれている恐れ」

 「固定資産税の算定に疑問が多い」。西日本新聞「あなたの特命取材班」にそんな声が寄せられた。今年は、課税対象の土地や家屋が評価替えされ、不服があれば申し立てできる3年に1度のタイミング。固定資産税は市町村が資産評価額や課税額を決めるが、全国的にミスが多く総務省も問題視してきた。一方で、自治体によって資産の評価方法に違いが見られることも問題を複雑にしている。

 北九州市で暮らす不動産業の60代男性は4月、毎年この時期に市役所から届く固定資産税の課税明細書をみて、言葉を失った。

 一例は駐車場の敷地。車の大きさほどしか奥行きがない。「宅地」としては使えないので、本来の地目は「雑種地」のはずだ。その場合は3割減額され、約4万円も支払いが減る。

 男性は7月の期限までに、北九州市に不服を申し立てる。認められれば、最大20年間分還付される。「算定ミスの多発を知った昨年から、制度を勉強してきた。業界の常識では首をかしげたくなるような土地の評価が見つかった」と不信を抱いている。

 資産評価の方法が、自治体裁量になっている部分があり、固定資産税をさらに分かりづらくしている。

 所有地が宅地などに利用しやすい真四角でなく、角の一部が他人所有などとなっている「不整形地」。総務省の「固定資産評価基準」では、不整形度合いを数値化し、一定比率で評価額を減額する指標を示しているが、導入は自治体裁量だ。北九州市では指標を導入しておらず、この男性の別の土地では、評価額が減額されていないという。

 同市は「正確な測量図がない土地もあるので、不公平にならないように指標を導入していない」と説明。一方、九州で同じ政令市の福岡、熊本両市は指標を導入している。

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 課税ミスを指摘した職員の人事評価が下げられ、異動させられた-。昨年6月、山口県田布施町の職員の訴えが町議会で取り上げられた。それが固定資産税だった。

 相続登記されていない資産は本来、相続人代表者の個人の資産とは分け、税額を計算する必要がある。ところが同町では未登記の資産も代表者分と合算し、非課税扱いとなるはずの少額の土地(30万円未満)などにも間違って課税。この職員は上司に指摘していたが、町側は1年間も調査していなかった。

 町税務課は取材に「作業量が膨大で、すぐ着手できる問題ではなかった。放置と捉えられても仕方ない。ただ、課税ミスの指摘と異動は関係ない」と釈明。同様のミスは20年間で約1700件、課税総額は約1700万円に上る。

 北九州市の男性のような「不整形地」などについても、同町は細かい減額評価を行ってこなかった。外部からも見直しの要望があり、今年から取り入れた。

 それによる減収は年間約2400万円。ただ、過去分については還付に応じない方針だ。「適切ではなかったかもしれないが、裁量の範囲内で適法だった」としている。

 田布施町と同様の課税ミスが判明した山形県。2019年の米沢市を皮切りに相次いで見つかり、最終的に全35自治体中、23市町村まで広がった。県担当者は「思い込みや前例踏襲で、誤りを見つけられなかった」と説明する。

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 総務省が09~11年度を対象に実施した全国調査で、約97%の自治体が固定資産税の税額修正を行っていた。内訳を土地でみると、7割が減額が必要で、3割は増額修正だった。

 同省は14年の通知で、「『滞納』の処分をしたにもかかわらず税額修正をまた行うなど、重大な誤りが後を絶たない」と自治体に注意喚起した。具体例としては、▽地目の誤り▽減額特例の適用漏れ▽システムのプログラムや入力ミス-など多岐に及んでいる。

 固定資産税に詳しい沼井英明弁護士(東京)は「国税では、国税不服審判所が裁決事例を公表している。自治体も納税者がミスに気づけるよう、審査結果や税額修正の例を積極的に公表するべきだ」と指摘する。

《固定資産税》土地や家屋などを対象とする地方税。元日時点の所有者が納税義務を負う。自治体は「評価額」を算出し、税額を計算。総務省が示す評価基準に従い、土地の場合は路線価の算定や形状などに応じた補正を行う。土地と家屋は3年に1度、評価額が見直される。不服があれば、自治体の「固定資産評価審査委員会」に申し出る。申し出は原則、評価額見直しの年の納税通知書交付から3カ月以内。自治体にとっては、税収の4割を占める重要な財源だ。

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