福祉避難所もどかしい一歩「混乱招くことなく場所公表」

 災害時に配慮が必要な障害者や高齢者が身を寄せる「福祉避難所」について、国は確保、運営面の改善に乗り出した。今年5月、開設場所や施設名の事前公表に消極的な自治体側に対し、受け入れ対象を特定した上で周知するようガイドラインを改定。要支援者のスムーズな避難につなげるためには一歩前進だが、そもそも避難所の数や環境整備、財政的な支援が追い付いていないなど課題は山積している。

 福岡県筑後市の住宅地。寝たきりで人工呼吸器を使う内田諒さん(13)の両親は避難場所の確保に頭を悩ませる。

 車で約10分の総合福祉センターは一般と福祉の両方の避難所を兼ねている。「多くの人でごった返す可能性がある場所ではやっぱり、息子のケアは難しい」と母まゆみさん(51)。医療機器などを抱えて移動するだけでも困難で、病院の一室などを利用できないか、複数の施設と交渉中。地域にも移動時のサポートをお願いしている。

 福祉避難所は、自治体が高齢者施設などと事前に協定を結んで確保するケースが多い。だが大半は、要支援者側が一般の指定避難所まで出向いた上で、行政が必要性を判断し、開設する。手間も時間もかかる。

 3月末現在、福岡県内では671カ所。ただ60市町村のうち政令市の福岡、北九州両市など計15市町村は「受け入れを想定していない(一般の)被災者が殺到しかねない」などの理由で、場所や施設名を明らかにしていない。こうした幾つものハードルが要支援者を避難から遠ざけ、自宅にとどまらせる結果を招いている、と指摘される。

 5月20日に内閣府が出した新たな指針は市町村に対し、各福祉避難所の受け入れ対象を「障害者」「妊産婦・乳幼児」などとあらかじめ定めた上で公表し、当事者や家族だけが避難できるようにする▽普段、通い慣れた施設などに直接避難できるよう、事前に調整を図る-などを求めた。

 環境が十分に整った施設の確保はこれからだ。熊本地震で障害児支援に携わった災害備蓄管理士の森孝一・西日本短大准教授(元福岡市立今津特別支援学校長)は「備蓄や支援スタッフ、一定の衛生的な空間がある福祉避難所はほとんどないのが現状」と指摘。受け入れ態勢を整えるには「何をどの程度準備すればいいのか具体的な方法や、財政的な支援も必要」とみる。

 福岡市や熊本市は特別支援学校を「子どもの福祉避難所」と位置付け、活用を図る。ただ多くの在校生の自宅からは遠く「一般の避難所でも、要配慮者が過ごしやすいスペースをきちんと区分けして設けるなど、デザインを急ぐべきだ」と語る。

(編集委員・三宅大介)

PR

PR