若者が中国共産党に入党する理由は 革命聖地巡る「紅色観光」に同行

 中国で事実上の一党独裁体制を敷く中国共産党は今月、創建100年の節目を迎えた。結党時50人余りだった党員は約9500万人に増加したが、中国の総人口14億人の約6%でしかない。党は党員に中国革命の「聖地」を巡って党の歴史を学ばせる「紅色観光」キャンペーンを展開するなど、習近平指導部の求心力を保とうと余念がない中、党員になった若者たちはどんな思いを抱えているのか。声を聞いてみた。(江西省井岡山、陝西省富平で坂本信博)

レンタルで紅軍コスプレ

 平日の昼下がり。何台も連なる観光バスから、水色の軍服と帽子を身に着けた百人以上の男女が降りてきた。紅軍(人民解放軍の前身)のコスプレをした紅色観光の一行だ。中国南部・江西省の山奥にある井岡山革命博物館。井岡山は1927年に建国の父、毛沢東氏が農民らの紅軍を組織して武装闘争の根拠地を築いた「中国革命発祥の地」だ。

 館内には抗日戦争や国民党との内戦の遺物、共産党の功績を誇る展示が並ぶ。等身大の紅軍兵士の人形が並ぶ再現ジオラマの前で、同じ軍服を着た30代男性が記念撮影をしていた。「会社の団体旅行だよ。党支部がある会社は100周年の期間中に一度は聖地に行くことになっている」。中国では国有企業はもちろん、民間企業でも社内に党組織の設置が求められている。衣装は会社が一括してレンタルしたそうだ。

昔の軍服姿で、中国共産党の革命博物館を見学に訪れた人々=江西省井岡山

 「1、2、1、2」。井岡山の毛氏の旧居近くでは、紅軍服姿の数百人の子どもたちが行進をしていた。学校教育の一環という。

 政府は革命の聖地をはじめ全国約600カ所を「愛国主義教育基地」に指定。聖地は山間部の貧困地域に多く、紅色観光は大きな経済効果をもたらしている。

 ただ、誰もが自ら望んで聖地巡礼をしているわけではない。企業や団体、学校関係の見学が大半で、ある観光ガイドは「みんなが真面目に説明を聞く訳じゃない。子どもを連れてきてもマルクス主義も分からないから無意味」と苦笑した。

習氏父の巨大陵墓も聖地に

 へいようで有名な世界遺産・秦の始皇帝陵から北へ約80キロ。陝西省富平県にある約7千平方メートルの巨大な陵墓も聖地の一つ。その地に眠るのは習近平党総書記(国家主席)の父、習仲勲氏だ。

 濃い緑や鮮やかな花が目にまぶしい敷地は掃き清められ、葉っぱ一つ落ちていない。彼の党への忠誠ぶりを毛沢東氏がたたえた言葉と大きな白い座像があり、参拝者が絶えない。

習近平総書記(国家主席)の父、習仲勲氏の記念館前でカメラに納まる人々=陝西省富平県

 党員だけでなく国民の間でも習近平氏の人気は高い。プロパガンダの影響に加え、北京の外交筋は「『脱貧困』を看板政策に掲げて国民の生活改善を印象付ける一方、汚職撲滅の『反腐敗』運動で庶民の不満をそらす習氏の手法が奏功している」と分析。「もし今、国家主席の直接選挙制度が導入されたとしても習氏が圧勝するだろう」と語る。

 ちなみに、共産党の元老だった習仲勲氏の墓を陵墓に大改造して記念館も建てたのは、当時陝西省のトップだった趙楽際氏。文化大革命期、都会の若者らを農村に送り込む「下放」政策で習近平氏が実際に暮らした農村も教育基地に整備した。趙氏はその後異例の出世を遂げ、現在は最高指導部メンバーとなっている。

「農民、労働者の党」は今

 「農村から都市を包囲する」。国民党の弾圧を受けた後、井岡山から反転攻勢した毛沢東氏は農民の支持を集め、革命を推進。1940年代は農民や労働者であることが入党の条件で、49年の中華人民共和国建国時は約449万人の党員の約半数が農民だった。

 しかし、その後の改革・開放政策で社会の表舞台に躍り出た民間企業家の入党を2002年に認めて以降、農民や労働者のための「階級政党」という党本来の性格は薄まっている。

 「党員になることは、社会で勝ち抜くためのパスポート」。北京の会社に勤める男性(27)は言い切る。母親に「就職や海外勤務にも有利になるから」と入党を勧められたという。

 反腐敗を進める習指導部は党員の質を重視し、入党審査を厳格化した。例えば学生が党員になるには成績優秀であることが前提で、献血などボランティア活動も必須。党の歴史を学んで課題をこなし、党員の推薦を受けて初めて入党できる。北京に住む30代男性は「党員になれるまで2年かかった。得も損もしていないけど、スマートフォンの政治教育アプリで勉強を続けている」と話す。

 既得権益層である党員に反感を持つ人もいるため、周囲には党員だと明かさない若者もいる。「マルクス主義に心酔しているわけではないし、貧富の差が広がるこの国が共産主義国家とは思わない」。北京の民間企業で働く女性党員(33)は言葉を継いだ。「でも、共産党第一主義で国を発展させてきたのは事実だ」

 格差拡大など社会のひずみから国民の目をそらす狙いもあり、習指導部は2049年の「建国100年」に向けて「強国路線」を加速させる。世界最大の共産党は、どこへ向かうのか。

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