「10、20年分の過疎化が一気にきた」豪雨被災地、集落の再生遠く 

連載「豪雨からの復旧 九州の被災地」㊤

 熊本県球磨村の仮設住宅で仮屋元(もとし)さん(77)、民子さん(74)夫妻は防災無線に耳を澄ませた。「球磨川が氾濫危険水位を超えました」

 梅雨入り間もない5月20日夜。打ち付ける雨音は、昨年7月4日を思い出させた。当時、1時間最大雨量は「息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感じる」と気象庁が言い表す83・5ミリ。泥水が集落や住民をのみ込み、避難した高台の保育園で立ち尽くした。

 災害後、河川整備の「計画」は進んだ。国と熊本県は3月、遊水地の整備や河道掘削を盛り込んだ球磨川流域の治水プロジェクトを策定。だが柱となる流水型ダムの完成は早くとも8年半後の「2030年以降」とされる。

 この1年で「実現」したのは、豪雨によって球磨川の本支流に堆積した172万立方メートルの土砂の撤去。治水力は1年前と同じレベルに回復したにすぎない。「不安は尽きない。でもここに住むと決めた以上、水害のリスクは受け入れないと」。早めの危険の察知と避難が命をつなぐ。

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 球磨川下流の八代市坂本町。会社員宮本道男さん(60)は、解体を終えたばかりの自宅跡で困惑していた。「かさ上げの高さ、工期が分からんと、動きようがない」

 市中心部の仮住まいの入居期限は22年8月まで。治水プロジェクトによる流域全体の宅地かさ上げの工期は、おおむね24年度まで。古里に自宅を再建したいが、かさ上げが終わるまで安心できない。家族は転居を希望する。「安全な宅地の確保が遅れれば、さらに(家族が)後ろ向きになるかもしれない」

 坂本町の人口は豪雨直前の3322人から、5月末には1割減の2948人になった。浸水した市役所支所は今も仮設のプレハブのままだ。

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 古里を取り戻すことの難しさを感じているのは、球磨川流域だけではない。4年前に福岡、大分両県で42人の死者・行方不明者を出した九州豪雨。犠牲者が最も多かった福岡県朝倉市では、支流が走る山あいで土砂崩れと氾濫が多発した。

 3~13世帯の小規模な集落が点在する高木地区。被害が甚大なためインフラ復旧に時間を要し、今も一部エリアは被災者生活再建支援法に基づき居住不能とされている。被災前に315人だった人口は5月末時点で183人と4割減少した。平均年齢は71歳だ。

 「10年、20年分の過疎化が一気にきた」。住民自治組織「高木地区コミュニティ協議会」会長の手嶋源五さん(71)の危機感は、近年の豪雨で傷ついた九州の他の被災地にも通じている。

 市は昨年度末、被災地区ごとに取り組む事業をまとめた「市復興実施計画」を策定。コミュニティー維持に向けて地区内の市有地を分譲する事業案などが盛り込まれたが、高木地区には「方策を検討する」とだけ記された。コロナ禍も再生を阻む。

 「何もできんで1年が終わってしまうかもしれない。年齢がまた一つ上がり、ますます動きが取りづらくなる」。時間ばかりが過ぎていく状況に、焦りが募る。

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 九州各地で豪雨災害が相次いでいる。いかに備え、被害を減らし、復旧するのか。課題は-。熊本豪雨から1年を機に考える。

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