「首相は国民の信頼失っている」失速した都議選、狂う解散戦略

 4日投開票された東京都議選で自民党は伸び悩み、想定を大きく下回って過去2番目に低い33議席にとどまった。菅義偉首相の就任以降、自民が今年4月の衆参3選挙をはじめ、地方選で苦戦を続けてきた流れは断ち切れず。既に次期衆院選の助走に入った党内からは「選挙の『顔』になるのか」と首相を突き上げる声が出始め、その解散戦略も練り直しは避けられそうにない。

 「都民の皆さんにお約束した自民、公明党で過半数を実現できなかったことは、謙虚に受け止めさせていただきたい」

 5日、官邸で記者団の取材に応じた首相は、努めて淡々とした口調を保った。だが、官邸を訪れた自民党幹部には、新型コロナウイルス対策で「ワクチン接種が思うように進んでいない。厳しかった」と悔しさをあらわにしたという。

 前回の都議選で、自民は過去最低(23議席)の惨敗を喫し、小池百合子都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」に都議会第1党の座を追われた。捲土(けんど)重来を期した今回、「自民は改選前から倍増の50議席台をうかがう勢い」「少なくとも自公で過半数は堅い」といった一部情勢調査もあり、選挙戦序盤までは衆院選に向けて弾みをつけられると楽観論が強まっていた。

 ふたを開けると、第1党こそ奪還したものの、改選前からの積み増しはわずか8議席。投票率が低迷し、安定した組織票を誇る自民に有利な条件だったにもかかわらず、七つある1人区では2勝に甘んじた。自民選対関係者は「新型コロナ、東京五輪・パラリンピックの対応など菅政権の国政運営に不満が高まっていることを見抜けなかった。危機意識が足りなかった」と歯がみする。

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 東京都議選は、その後にある大型国政選挙の帰すうを占うリトマス試験紙のような選挙と言われてきた。首相は、6月25日の告示日に党本部前でマイクを握っただけで、後は街頭演説などに入らず深入りを慎重に避けたとはいえ、「勝ちきれなかった」との冷徹な事実は痛手だ。

 ワクチン接種を前倒しで進めてウイルスを何とか制御しつつ、東京大会を一定の成功に導き内閣支持率を上昇させた上で、パラリンピック直後の9月に臨時国会を召集して衆院解散を断行する-。

 永田町を覆うこのメインシナリオは、首相が解散権を行使できる求心力を保っていることが前提条件。しかし、現状は「ワクチンが代表的だが、国民の期待をあおっておいて、それができないと『何だよ』と失望に変わってしまう。首相は国民の信頼を失っている」(衆院ベテラン)。ワクチンの足踏み以外にも、東京都のリバウンド(感染再拡大)の行方、それに伴う五輪観客の有無の最終決着と、政権批判を呼びかねない不安材料は尽きない。

 選挙に不安を抱える衆院の若手・中堅から今後、都議選を巡る首相の“責任論”が噴き上がる可能性もある。九州選出の議員は「首相では選挙が戦えないという空気が急速に出てきている。有権者も『菅さんじゃ駄目だ』と言い始めた。誰かが反菅ののろしを上げたら、一気に流れができる可能性はある。それぐらい、今の党内はもろい」と話す。

(郷達也、湯之前八州)

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