海と街と山 丸ごと満喫 北九州・企救山系の歩き方

 九州と本州を隔てる関門海峡と、門司港周辺の街並みを眼下に見渡せる山々がある。北九州市の企救(きく)山系。取り立てて高く、険しい山が連なっているわけではないが、なにやら山歩きには独特の楽しみ方があるようだ。その楽しみ方とは-。西日本新聞の山歩き専門誌「季刊のぼろ」の取材班が現地を訪れ、最新刊の夏33号で特集記事を掲載。その一部を紹介する。 (木村貴之)

 特集は、題して「海峡の山 北九州・企救山系を丸ごと満喫」。副題の“丸ごと”に楽しみ方のヒントがある。探るにはまず一帯の地理を把握しておきたい。

 企救山系は、九州の北東端に位置し、関門海峡に突き出た企救半島(別称・門司半島)の脊梁をなす山地。足立山(597・8メートル)を最高峰に、戸ノ上山(517・8メートル)や風師(かざし)山(362・2メートル)、矢筈(やはず)山(266メートル)などが連なる。

 地図では、半島は長さ約15キロ、幅は最大8キロ程度で、西側に北九州市街地が広がる。同市門司区の清滝公園から小倉北区の足立公園まで約21キロの自然歩道が山系を結び、コース一帯は北九州国定公園に指定されている。コンパクトな地の利を生かし、海と街を近くに感じる山歩きができるわけだ。

 こうした点に着目し、次の切り口で取材に臨んだ。門司港駅を出発して日帰りキャンプも楽しめる風師山-矢筈山の潮風ハイク▽山系で高さが1、2番目の足立山・戸ノ上山の縦走▽北九州市街の夕夜景を楽しむ小文字山ナイトハイク-。足立・戸ノ上山縦走は約11キロに及ぶコースで歩き応えを楽しむ一方、樹林や神社、展望スポットなどで“癒やし”も満喫する趣向だ。

小文字山の山頂から一望する北九州市街の夕景。宵やみが迫る街並みが近くに感じられる

 やがて取材班の足取りは登山道を離れ、山歩きはいつしか街歩きに。フィールドは麓にも広がり、まさに“丸ごと”満喫コース。際立つのは、山歩き途中でもごく自然に触れ合う地元商店街の商店主らの人情だ。つい寄り道先が増えてしまうのも特色。海と街に近い企救山系は、「人にも近い」と感じさせる。

 驚きと発見も相次いだ。取材班に同行した地元市民やガイドが「へぇ」といった感嘆の声を連発。謎を解く鍵はこの地域の歴史にある。

 山系を形作るのは古生代の堆積岩。登山道の岩壁に水中生物の化石らしき物が随所に残る。エリア内には戦時中の軍事施設だった堡塁(ほるい)跡も点在。独特の地形から交通の要衝として知られてきた地域が、軍事拠点として機能していた一面も物語る。時空を超え、多様な時代を丸ごと実感できる地域ともいえそうだ。

 コンパクトなエリアにこぢんまりとした山々が連なる企救山系は、地形に由来する独特の歴史と、海、街、人に近い独特の文化が積み重なっている。

 ここに引き寄せられるように移住し、創作と生活の拠点として浸透しているクリエーターがいる。グラフィックデザイナーの黒田征太郎さん(82)。特集は、そんな彼が描き下ろした絵画で締めくくる。添えられたメッセージは「僕の山のイメージです。かさなりあってます。」。目にした途端、くぎ付けになるような、鮮やかな山の絵。どうぞお楽しみに。

 (写真・納富猛、西山宏)

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