「先に逝くやつがあるか」弟を殺され20年、犯人はどこに

 福岡県田川市で2001年にタクシー運転手大井房男さん=当時(50)=が刺殺され、売上金などが奪われた強盗殺人事件は19日、発生から20年を迎える。福岡県警は延べ8万1千人の捜査員を投入し捜査してきたが、犯人につながる有力な情報は得られていない。大井さんの兄・貞男さん(77)=同県川崎町=は「遺族の時間は止まったままだ」と事件の解決を願う。

 「房男はどこだ」

 事件の連絡を受け、駆け付けた田川市内の中元寺川の土手。日は沈んで闇が周囲を包む中、貞男さんは必死に探した。警察の規制線が張られ、数十メートル先に遺体を覆ったブルーシートが見えた。弟なのに、近づくことはできなかった。

 深夜、田川署での対面で現実を突き付けられる。大井さんの顔を見て「親より先に逝くやつがあるか」。涙があふれた。数年前まで毎月のように、署に捜査の状況を聞きに行った。「諦めきれない」。悔しさがあふれてくる。

 大井さんと02年春に結婚する予定だった女性(67)は「さみしくなると思い出す」と涙ぐむ。

 事件の2年ほど前に知り合った。前夫と離婚し、長男が高校に入った頃。大井さんは長男とも仲が良く、バッグをプレゼントされた。「喜んで持ち歩いていた」

 事件後しばらくは「金目当て、怨恨(えんこん)…。何度も事情を聴かれた。弔う余裕もなかった」という。大井さんの写真は乗務員証が唯一。今も居間に飾る。「2人で歩むはずの人生を奪った犯人が憎い」と唇をかむ。

 20年が経過し、大井さんの7人きょうだいは、今は3人に。母ヒサさんは14年前に亡くなった。「母が一番無念だったろう。何とか朗報を報告したい」。貞男さんは声を絞り出した。田川署=0947(42)0110。

(吉川文敬)

 田川市タクシー運転手強盗殺人事件 2001年7月19日夜、福岡県田川市川宮の中元寺川の土手で、同市寿町のタクシー運転手大井房男さん=当時(50)=が背中を数カ所刺され、死亡しているのが見つかった。死因は失血死。売上金などが奪われ、タクシーは約3キロ離れた同県金田町(現福智町)の農道に乗り捨てられていた。

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