日韓の首脳外交 関係改善への意思を示せ

 東京五輪開会式への出席を検討していた韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が訪日を見送り、菅義偉首相との初の対面による首脳会談も実現しないことになった。

 日韓は1965年の国交正常化以降最悪とも形容されるほど関係が冷え込んだままだ。五輪は首脳外交を繰り広げる貴重な場である。今回は関係改善に向けた糸口を探る数少ない好機だっただけに、これを生かせなかったのは残念だ。

 文氏の訪日見送りの理由について韓国政府は「(首脳会談の)成果が十分得られる見通しがない」などと説明している。

 韓国側は日本による輸出規制強化措置の撤回などの成果を求めていた。日本側は元徴用工問題で具体的な解決案を提示するよう従来の主張を重ね、折り合えなかったとみられる。

 さらに在韓日本大使館の総括公使が韓国の記者との懇談で、性的表現を用いて文氏の対日外交姿勢を批判し、反発を招いたことも悪影響を及ぼした。双方が首脳会談の可能性を探るさなかに、緊張感を欠く行為と言わざるを得ない。

 近年の関係悪化は、歴史認識問題を巡り韓国で国交正常化の土台となる請求権協定を覆すような司法判断が示されたことが発端だ。文氏は外交に支障を来さないために必要な国内調整を怠っており、元徴用工に加え元慰安婦の問題でも解決に向けて目立った動きを見せていない。

 五輪の首脳外交では、2018年の平昌冬季五輪で当時の安倍晋三首相が開会式に出席し、文氏と1時間会談した。

 今回、菅氏は会談には応じるものの、儀礼的な対応にとどめる方針だった。韓国側から解決策が提示されず、進展は見込めないと踏み、必要最小限の会談で十分と判断したのだろう。

 両首脳は6月に英国で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、短時間のあいさつを交わしただけである。

 ともに相手国を「重要な隣国」と位置付け、関係改善が必要との認識を示している。だが実際の行動からは改善に向けた意思が伝わってこない。互いに相手に責任を押し付け合うばかりでは展望も開けまい。関係の停滞が国民感情にも影響している現状を放置してはならない。

 日韓関係は2国間の利益にとどまらず、東アジアの安定にとっても重要だ。中国は軍備拡大を続け、北朝鮮の核・ミサイル開発も止まらない。これらの情勢に対処するためにも、米国の同盟国である両国首脳間の意思疎通は欠かせない。

 文氏は任期が1年を切り、菅氏も秋までに衆院選を控える制約はあるが、両首脳は大局観を持って事態打開を図るべきだ。

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