『復讐するは我にあり』佐木隆三は見たか、連続殺人犯の心の根っこ

フクオカ☆シネマペディア(47)

 1960年代前半、福岡県苅田町をはじめ全国各地で西口彰元死刑囚が起こした連続強盗殺人を基に、北九州市ゆかりの作家、佐木隆三が書いた同名小説が原作だ。「復讐するは我にあり」(1979年、今村昌平監督)は、えたいの知れない怨霊につかれたかのように、詐欺と殺人を重ねる男を描く本格的な犯罪サスペンス映画である。

 緒形拳演じる榎津厳は、長崎・五島列島でカトリック信者の家に生まれた。戦後、父親の鎮雄(三国連太郎)は大分県別府市で旅館を開業する。厳は加津子(倍賞美津子)と結婚するが、詐欺事件で収監される。仮出所後、父と妻の不義を疑って一騒動を起こし、家を出て流浪の旅へ。詐欺を働きつつ、福岡県で集金の専売公社職員2人や、東京で弁護士、浜松市で旅館を営む母子を次々と殺害するのだ。

 弁護士や大学教授を装って言葉巧みに近づき、相手が心を許したところで襲いかかる。ハンマーで殴ったり、刃物で刺したり、首を絞めたり。その挙動は、獲物を仕留める野獣のようであり、怨霊がいきなり憑依(ひょうい)したかのようでもある。時には追い詰められた心が暴発した襲撃にも見えるが、後処理はそつがない。緒形は、そのように悪賢さと凶暴さを併せ持つ男を、ほとばしるようなパッションを見せつけながら、見事に演じる。

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