習指導部の看板政策で急拡大? 南米の毒アリが中国から日本に来る理由 

あなたの特派員

 南米原産で強い毒を持つ「ヒアリ」が6月下旬、中国広東省から大阪に運ばれたコンテナや周辺で見つかった。「今年も日本で発見が相次ぐのではないかと心配。南米のアリがなぜ中国から来るの?」。西日本新聞「あなたの特派員」に福岡県の読者から調査依頼が寄せられ、調べてみた。

 「ライターの火で肌を焼かれたような激痛だった」。中国の会員制交流サイト(SNS)をのぞくと、ヒアリにかまれた体験談の投稿が飛び交っていた。

 ヒアリは体長2~6ミリ程度の赤茶色のアリ。刺されると激痛が生じ、アレルギー反応で死に至ることもある。人や家畜を襲い、農作物を荒らすだけでなく、ミミズや益虫を食べて生物多様性にも悪影響を及ぼす。

 1930~40年代に南米から米国に侵入して爆発的に増え、世界貿易の広がりで各国に拡散。中国本土では2004年に沿海部の広東省で初めて確認されたという。中国政府は5カ年計画で駆除を進めたが、ヒアリの生息域は急拡大してきた。

 中国の農業農村省によると、12年に152地区だった生息域は16年に281地区に増え、18年には378地区に拡大。今年4月時点で448地区になり、12年の約3倍に広がった。

大量の貨物、不足する検疫職員

 なぜ急拡大したのか。背景を探ると物流網の急速な発展に加え、中国政府が進める緑化事業の影響が浮かび上がってきた。習近平指導部が脱貧困や反腐敗(汚職撲滅)とともに重点政策と位置付ける事業だ。

 華南農業大ヒアリ研究センターの陸永躍教授は中国メディアで「8割を超えるヒアリが芝生や苗木、花卉(かき)の輸送を通じて拡大・侵入している。各地の緑化事業に使われている資材がヒアリ拡大の主な媒介になっている」と分析。花卉や苗木の集散地で毎日大量の貨物が出入りしている一方、地方は検疫職員の不足が深刻で、ヒアリの検査ができるのは一部だけだと指摘した。

 日本では17年に兵庫県で、広東省からの貨物船のコンテナでヒアリが初確認されて以降、福岡県など16都道府県で見つかった。19年11月に北九州市で開かれた日中韓3カ国の環境相会合では、日本が中国にヒアリの流出防止を求め、中国も協力を約束。中国政府は「今後5年間で検疫などを強化し、繁殖を食い止める」としている。

 グローバル経済の負の遺産でもあるヒアリは、新型コロナウイルスと同様に水際対策が重要。貨物港や空港に近い地域を中心に、この夏も注意が必要だ。

(北京・坂本信博)

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