宅地と土砂崩れ 盛り土の底に危険の萌芽

 自然災害の多い日本で土砂災害防止法が制定されたのは2000年と比較的最近のことだ。前年の梅雨に広島県で300件を超える土砂崩れが発生し、それが立法の契機となった。

 対策は本格化しているが、風水害の頻度も増しており、今年の梅雨も各地で土砂崩れが起こった。中でも、住宅地を切り裂くような静岡県熱海市の土石流は改めてその脅威を私たちに実感させた。現場の最上部で行われた盛り土が原因とされる「人災」の側面が強まっている。

 そうした個別の事情は別にしても、平地の少ない日本では多くの場所で土砂災害が起こり得ることは肝に銘じたい。とりわけ丘陵地に面した住宅地や、高台に盛り土された宅地などに住む人は注意が必要だ。行政や専門家の助言を受け、地盤を含む住居の環境を総点検したい。

 ここ数年で九州に住む私たちの記憶に新しい災害に、大分県中津市耶馬渓町で18年4月に起きた土砂崩れがある。住宅地の背後にある山が突然崩落して住宅4棟が土砂に埋まり、犠牲者は6人に及んだ。

 大雨や地震もなく、地下水の影響や地盤の劣化などの要因が重なったとみられる。土砂崩れの兆候をつかむのは難しい。

 住民が被害に遭う恐れがある土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は土砂災害防止法に基づき全国で66万カ所余が指定されている。九州7県では14万5千カ所余を数える。長崎、大分、鹿児島、熊本の順で多い。

 九州の同警戒区域の大半は特に危険な特別警戒区域(レッドゾーン)だ。宅地開発が規制され、新築や建て替えの際には土砂災害に耐える構造にする必要がある。建物の補強や移転をする場合は補助を受けられる。

 祖父母やその前の代から災害を意識することなく暮らしてきた土地であれば、危険性を実感するのは簡単ではなかろう。移転となればなおさらだ。

 それでも、昨今の風水害の現実は直視すべきだ。気象庁の観測によると「非常に激しい雨」(1時間50ミリ以上80ミリ未満)の発生回数は約40年間で1・5倍に増えている。地球温暖化の影響とみられる。

 高度成長期の1960~70年代以降、山に近い地域が開発された「ニュータウン」では大規模な盛り土による土地造成が行われた。大雨は直接被害を出さない場合でも、地下水となり地盤をゆっくり浸食していく。

 熊本地震(2016年)時の宅地の地滑りや液状化による被災住宅について、国は盛り土造成地への特別策と位置付けて復旧事業を展開した。宅地の見えない奥底に、危険な災害の萌芽(ほうが)が潜んでいる可能性はある。

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