「名を捨て実を取る」原発活用に動いた安倍前首相

 政府は「エネルギー基本計画(エネ基)」の改定素案に、原発の新増設やリプレース(建て替え)の記述を盛り込むことを見送った。菅義偉首相の2050年脱炭素方針を受け、原発の積極活用を求める機運が自民党で高まったものの、迫る衆院選で争点化されることを警戒した政権が抑え込んだ。一方、既存原発の再稼働加速や長期運転を目指す方向性は明記。自民内の原発推進派からは「名を捨て実を取った」との声が上がる。

 「新増設や建て替えの明記を目指したが、日ごとに困難になっていった。既存原発の最大限の活用を実現させる要求に重点を移した」。自民内の「リプレース推進議員連盟」幹部は、この間の全体的な流れをこう振り返った。

 首相が脱炭素方針を打ち出したのは昨年10月。原発推進派はこれに呼応し、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない原発をアピールする攻勢に出た。主張は党内の多数派となり、今年4月には核となる同議連が発足。顧問には、日に日に存在感を復活させつつある安倍晋三前首相が就いた。

 だが、風向きが変わる。

 新型コロナウイルス対策の迷走で政権の支持率が急落し、次期衆院選で原発政策がクローズアップされることへの懸念が強まった。加えて、官邸筋によると、脱原発に理解を示す河野太郎行政改革担当相や小泉進次郎環境相が、新増設やリプレースへの反対論を首相に何度も進言。これらが相まって、6月に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太方針」にキーワードは入らなかった。

 推進派も強烈な巻き返しを図った。

 既存原発の活用であれば世論の理解を得やすいと踏み、再稼働の加速や「原則40年、最長60年」とされる原発の運転期間延長をエネ基で担保するよう要求する戦術に転換。政府関係者によると、特に安倍氏が官邸中枢に対し熱心に働き掛けを行った。衆院選だけでなく、党総裁選も間近に控えた首相は、後ろ盾の一人である安倍氏の意向を軽視できない立場。結果、「再稼働加速タスクフォースの立ち上げ」「長期運転を進める上での課題への取り組み」といった文言が加わり、エネ基の原発を巡る推進、慎重両派の綱引きは「痛み分け」の形で決着した。

 「電力業界や、原発の地元に何とか顔が立つ結論に落ち着いた」。九州の原発立地地域を地盤とする推進派議員は、ほっとした表情を見せた。

(湯之前八州)

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