あの日の春秋:伏魔殿と田中外相(2001年7月31日)

外務省は「公家集団」とも呼ばれる。浮世離れした人たちの集まり、の意味。なるほど、世間の常識とはかけ離れた犯罪が、これでもかこれでもか、と続く▼こんどはデンバー総領事が公金流用で懲戒免職になった。あんまり続くので何人目かは忘れた。でも、今回は「初」が付く。外交官試験に合格した、いわゆるキャリア組なのだ▼流用額は約1千万円。金額も大きいが、態度も大きかった。パーティーの参加者から「閣下」と持ち上げられて悦に入っていた。ふんぞり返って絵画や家具を買いあさった。キャリア官僚をエリートともてはやす社会は、そんな人間も生んだ▼「機密費」「公金」…。いろんな言い方がされた。どっちにしても、天から降ってくるお金などない。みんな私たちがせっせと納めた税金である。それを寄ってたかって、わが物にした▼在外公館が怪しい、といううわさは以前からあった。昔のことだと思っていたら、そうではなかった。デンバー総領事は「ここだけの話ではない」とも話しているという。税金泥棒がほかにもいるかどうかは、調べてみればすぐに分かる▼外務省も構造改革の対象に加えよう。もちろん、調査はこの役所に任せてはおけない。今回の件を1年間も隠してきた彼らに自浄能力はない。なにしろ「伏魔殿」だ。外部の人を入れて帳簿をひっくり返すべし。田中真紀子外相、出番ですよ。(2001年7月31日)

 論説委員から 国民の人気を背に改革の旗を掲げて外務省に乗り込んだ田中氏。だが、強引な手法は官僚の抵抗に遭い、志を果たせず更迭された。一方、官僚の不祥事は今もなお。財務省の公文書改ざん、総務省の接待問題、経済産業省のキャリア2人による新型コロナ対策の支援金詐取事件も。霞が関全体が伏魔殿化したかのように。自浄能力のない官庁の改革は、誰に出番を頼めばよいのやら。(2021年7月25日)

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