「恩送りの輪」広がれ テイラーさんの福岡日記

 2年前の8月の着任時から「福岡在任中にやりたい」と思っていることの中で、コロナ禍でまだ実現できていないことがいくつかあります。一つは「博多祇園山笠」で過去に首席領事が経験した集団山見せの台上がりを務めることとクライマックスの追い山を見ることです。昨年に続き今年も舁(か)き山行事は延期でしたが、今年初めて飾り山を見てその豪華絢爛(けんらん)さに感動しました。

 当館主催の「米国独立記念日」のレセプションも2年連続で中止となりました。来年は米国の誕生日を福岡で盛大に祝いたいです。今年は代わりに祝賀メッセージをツイッターなどのSNSで7月4日に発信しました。動画撮影は、テレビ西日本の番組で知った福岡市西区日向峠の私有地にある「青い自由の女神」像の前で許可を得て行いました。ニューヨークの自由の女神像は移民がもたらした米国の強さと多様性の象徴ですので、福岡で「青い自由の女神」像に会えてうれしかったです。

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 今は自由な渡航が難しいですが、米国への留学や旅行で米国市民との交流を楽しむ九州の若者を増やすことも私の望みです。今でこそ日本は私の第二の故郷ですが、19歳の時に初来日して中国・四国地方に宣教師として2年住んだ時は、話せる日本語は片言で日本の知識もわずかでした。しかしこの時の経験が私の視野を広げ、日本が大好きになりました。物事にはいくつかの方法があって正解は一つではないことや、自分以外の視点を持つことの大切さも学びました。

 当時は来日前にアルバイトでためた生活費が頼りの質素な生活でしたが、出会った日本の方々の親切のおかげで心は満たされていました。頻繁に家に食事に招いてくれた年配の女性(自称「ジャパニーズ・ママ」)は、私の靴下の複数の穴を見かねて当て布で新品の時より丈夫に繕ってくれました。その方の優しさを忘れぬよう今でもその靴下を大切に持っています。いつも散髪代を割り引いてくれた理髪店やパンの耳を分けてくれたパン屋さん、自転車で汗だくの夏に冷たい飲み物とおやつを出してくれた初対面の人たちなど多くの方が友人として優しく接してくれました。

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 2001年に日本で公開された米国映画「Pay It Forward(邦題 ペイ・フォワード 可能の王国)」がコロナ禍の中で再び注目を集めていると読んだことがあります。「pay it forward」は米国社会に根付いている概念で、親切にしてくれた人に直接恩返しができない時に別の人に「恩送り」することです。

 今の私の旺盛な好奇心や幸せな家庭と仕事は若い頃の日本での経験があったからです。私は「恩返し」とともに「恩送り」によって日本人の皆さんに感謝を伝えたいと思っています。その思いで九州各地の学生さんに海外経験の意義を講演などで伝えて奨励しています。

 残り1年の任期でも九州の多くの方々との対話を楽しみにしています。また日米の市民間で恩送りの輪が広がり、両国の絆がさらに深まっていくことを願っています。

 在福岡米国領事館のジョン・テイラー首席領事(53)のコラムは今回で終わります。

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