1票の格差是正 地方の声を切り捨てるな

 地方の声を切り捨てず、いかに国政に反映するか。「1票の格差」是正に不可欠な視点だ。

 2020年国勢調査の速報値に基づき、衆院小選挙区は15都県で「10増10減」の見直しが必要となった。来年の通常国会で法改正が図られる見通しだ。

 人口比を反映しやすい議席配分方法「アダムズ方式」が初めて導入され、東京都の5増など計5都県で定数が増える一方、長崎など10県で各1減となる。

 長崎を含む8県は前回の国勢調査より人口減少率が拡大している。人口の偏在が解消されない限り、こうした地域に定数減のしわ寄せが及び続ける。

 東日本大震災の被災地である宮城、福島県も削減対象となった。人口減の要因は地域によりさまざまで、両県のように人知を超えた事情が影響する場合もある。こうした地域ほど国政の手当てが必要なのに、地域の声を届ける国会議員が機械的に減らされる現状はあまりに酷だ。

 東京など人口集中地域だけ定数を増やす手もあるが、議員の純増は世論の理解は得にくい。現行の小選挙区比例代表並立制の見直しも現実味が乏しい。

 そこで議論の俎上(そじょう)に載っているのが参院との機能分担だ。参院を都道府県ごとの「地域代表」と位置付ける案が、政党や全国知事会などから出ている。

 ただ、国会議員を「全国民の代表」とし、投票価値の平等を求めている憲法との兼ね合いもある。自民党は参院の合区解消と絡めて改憲を訴えるが、党外での理解は進んでいない。

 合区やアダムズ方式の導入を決めた際、法の付則に「選挙制度の抜本的見直し」や「不断の見直し」を明記しながら、国会はこれまで具体的措置を講じてこなかった。小手先の定数見直しでは、人口偏在の進行と格差拡大のいたちごっこを繰り返すばかりだ。

 今度こそ抜本的改革は避けられない。当面は地方の疲弊を食い止めるためにも、憲法の枠内で可能なことを探り、できることから取り組むしかない。

 地方の声を反映する国会運営上の工夫として、予算委員会などで行われる地方公聴会の積極活用がある。現在は審議終盤のセレモニー的な面が否めない。公聴会での意見を受け議論を深める運用を図るべきだ。国民が国会に直接要望できる請願も会期末の一括審査が多い。地方議会の意見書なども国会審議に反映する知恵を絞ってほしい。

 政党にも努力の余地がある。地方組織の充実は地方の声を吸い上げるのに有効だが、野党の多くは地方議員の数をはじめ地方での基盤が脆弱(ぜいじゃく)だ。頭でっかちな現状が地方の問題に鈍感な一因になってはいないか。

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