「異常になれ」大野を五輪連覇に導いた井上監督の言葉

 ようやく実感した。「日本代表として闘って9年。やっと時代をつくった、歴史をつくったと言える」。日本男子で4人目の五輪連覇。井上康生監督も果たせなかった偉業に大野は表情を変えなかったが、達成感が言葉から湧き出た。

 リオデジャネイロ五輪を圧倒的な内容で制すると、待っていたのは連覇への期待だった。「誰かのまねをできるレベルの話ではない。真っ暗なところで一筋の光を見つけるために歩んだ」。道しるべとなったのは井上監督の言葉。「金メダルを一つ持っているのだから、正々堂々と立ち向かえば良い」と背中を押されたと同時に「異常になれ」と言われた。

 井上監督は2000年シドニー五輪をオール一本で制しながら04年アテネ五輪ではメダルを逃した。冬季五輪を連覇したフィギュアスケートの羽生結弦(ANA)を引き合いに「自分に酔い、演じきれる超一流の強さがある。不安や恐怖との葛藤があっても妥協や遠慮をせず、ストイックに準備できるかが異常性」と選手たちに求めた。

 「リオの自分を超え、圧倒的な存在から絶対的な存在になる」と大野は得意の大外刈りと内股の打ち込みを多い日は1日千本以上も繰り返す。「延々と練習を続けられる強さが彼の異常さ」と井上監督も舌を巻いた。100キロを超える選手を相手に大外刈りを練習することもあった。

 大外刈りは相手の体勢を崩してから軸足を踏み込んで掛けるのが原則だが、大野は相手が力を入れにくい膝裏に足をねじ入れて一気に刈る形を提唱。天理大の穴井隆将監督に「(講道館の創始者)嘉納(治五郎)先生がびっくりするよ」と驚かれた。決勝では延長でその形から大外刈りを繰り出した。相手を腹ばいにさせてプレシャーをかけ、技ありを奪った支え釣り込み足につなげた。

 「準決勝、決勝と延長が続き、一瞬でやられる恐怖を感じていた」と明かしながら、おくびにも出さなかった精神的な強さ。井上監督に「世界最強の柔道家。一緒に闘えたことが幸せ」と言わしめたことこそ、絶対的な王者の域へと達した証しだった。 (末継智章)

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