大野、死闘9分26秒制す 「防衛的悲観主義」で恐怖ねじ伏せ 男子73キロ級

 準決勝に続く延長戦。6月の世界選手権覇者、シャフダトゥアシビリとの決勝は9分26秒の死闘だった。極限の闘いで男子73キロ級の大野は「最後は大外刈りか内股で決まる」と考えたが、出たのは支え釣り込み足。体が自然と動いていた。「思っていたより上の反応を(体が)してくれた。勝負に絶対はないが、結果は絶対には近づけた」とリオデジャネイロ五輪を超えたと実感した。

 1年5カ月ぶりの実戦が五輪本番。延長続きの闘いに「恐怖を感じていた」。泰然自若としている大野だが、日々の稽古でも「常に自分が負ける姿を想像し、ネガティブになっていた。我慢を強いられ、心が折れそうになる瞬間が多かった」。 それでも平常心を貫けたのは「防衛的悲観主義」の成果だ。心理学の一つで物事を悪い方向に考えて入念に準備をする考え。6月に男子日本代表の金丸雄介コーチから紹介され、天理大の先輩で五輪3連覇の野村忠宏氏からも「不安や怖さを抱えて闘うのは悪いことではない」と聞いた。

 「粗野なれども卑に非ず」(原文ママ)。白い布地に黒い文字が縫われた額が、大野の自宅にある。東京・世田谷学園高卒業時、当時監督で柔道私塾「講道学舎」の恩師、持田治也氏から贈られた。同氏は「洗練されていなくてもいいし、失敗もいい。でもずるく生きるな。真っすぐ進めとの思いを込めた。将平には小さくまとまってほしくなかった」と意図を語る。部屋の模様替えが好きな大野もこの額は常に見える位置に掛けている。

 相手と正対し、がっちりと組み合って投げる。指導狙いや返し技は選択肢にない。「古き良き時代の柔道を体現したい。これが柔道だというものを見せなければ」。お家芸を背負う男の自負が聖地の畳に深く刻まれた。絶対王者となった大野が次に目指すものは-。大野は答えた。「人生一生修行です」。3年後のパリを目指すかどうかは分からないが、真っすぐ進む柔道家としての闘いは続く。 (末継智章)

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