「黒い雨」訴訟外も救済でも…長崎は「別問題」

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」訴訟を巡る上告見送りに関し、政府は27日の持ち回り閣議で「原告84人と同じ事情の人は訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう早急に対応を検討する」との菅義偉首相の「談話」を決めた。一方、首相は国が定める被爆地域外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」が被爆者認定を求める訴訟について「裁判の行方を見守る」と述べるにとどめた。戦後76年。今回の政治決断で、原爆の健康被害に苦しむ人たちがどこまで救済されるかは見通せない。

 談話には「(原爆の健康被害は)国の責任において援護するとの被爆者援護法の理念に立ち返って、その救済を図るべきであるとの考えに至った」として上告しない方針を明記。その上で「一審、二審を通じた事実認定を踏まえれば、一定の合理的根拠に基づき被爆者と認定することは可能だ」と説明した。

 一方、判決には過去の判例と整合しない点があるとして「これまでの被爆者援護制度の考え方と相いれない」と主張。その上で「『黒い雨』や飲食物の摂取による内部被ばくの健康影響を科学的な線量推計によらず、広く認めるべきとした点については容認できない」と問題点を指摘した。

 救済の範囲を巡っては、田村憲久厚生労働相はこの日、原告と「同じ事情」の人については、被爆者認定指針を見直し、個別に判断する方針を示した。加藤勝信官房長官は、救済対象の拡大について「長崎県、長崎市とも相談していく」と述べ、長崎も含めて検討する方針を示した。だが、厚労省の担当者は「長崎は今回の判決で事実認定されたわけではなく、別の問題だ。一義的には広島の問題で、黒い雨の事実認定を前提に進めていく」と述べた。

 ただ、被爆者認定に科学的な裏付けを求める国側の主張を否定し、「原爆の放射能で健康被害を生じる可能性を否定できないことを立証すれば足りる」とした広島高裁判決が確定すれば、長崎の訴訟に影響する可能性がある。政府高官は長崎の救済のあり方について「被爆者認定指針を見直す中で議論することになる」と述べた。

 広島高裁判決について、政府内では上告を求める意見が根強かったが、首相が26日、高齢者が多い原告の早期救済を優先させる考えから上告しないと表明した。

 (久知邦、山下真、前田倫之)

 首相談話 国政の重要事項に関する首相の公式見解。正式名称は「内閣総理大臣談話」で、閣議決定して発表する。内閣の発足や総辞職といった節目や大きな政治決断を行った際に示される。2019年7月に当時の安倍晋三首相がハンセン病元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決を巡り、控訴断念と「反省とおわび」を盛り込んだ首相談話を公表した。一方、「首相の談話」は首相の決裁だけで発出する内外へのメッセージ。閣議決定は不要で、首相談話とは区別される。

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