1964年東京五輪機に生まれたスナック、TOKYO2020下の変革

【東京ウォッチ】

 1964年の東京五輪の開催を機に夜の社交場として誕生したとされるスナックが、再び巡ってきた東京五輪の高揚感の陰で苦境に立っている。新型コロナウイルス禍で営業時間の短縮や酒類提供の自粛が相次ぎ、全国で1割程度が廃業したと推計される。逆風の中、オンラインによる新業態を模索する動きもある。

「世の中の害になる商売をやってきたのでしょうか」8千軒廃業

 4度目の緊急事態宣言が出ている東京。都から酒類提供の禁止が要請される中、JR西荻窪駅近くの雑居ビルでは、スナックの多くが休業している。「五輪で盛り上がると思っていたのに…」。30年以上、スナックを経営するママの勝家朋枝さん(67)は嘆いた。

 店では客席にアクリル板や消毒用アルコールを置き、女性スタッフの出勤時には検温を徹底している。それでも、宣言やまん延防止等重点措置のたびに、休業や時短営業に応じる。「今年はほとんど店を閉めています。いつになったら通常営業できるのでしょうか」

 長引くコロナ禍で廃業を決めるスナックも目立つ。

 スナックを研究する東京都立大の谷口功一教授の調査では、全国の約7万~8万軒のうち、昨春以降に少なくとも8千軒が廃業したとみられる。谷口教授にはママから多くの相談が寄せられており、「私たちは、世の中の害になる商売をやってきたのでしょうか」など悲痛な声もあるという。

 「憲法が保障する『営業の自由』が、簡単に政府の規制対象になってしまっている」。法哲学者である谷口教授は、そう考えている。

 64年の東京五輪をきっかけに生まれたという説が一般的なスナック。当時、開催都市の東京では、外国人観光客の目を意識し、美化運動や風紀の取り締まりが強まった。酒を提供する深夜喫茶やスタンドバーの深夜営業が禁止され、抜け道として、軽食(スナック)を出す名目で酒も振る舞う業態で営業したという。

 それから半世紀余り。収束が見えないコロナ下で、新たな動きが起きている。

利用者の6割が女性、新たな社交場「オンラインスナック」

 好みのお酒を片手に持つ女性たちが、画面越しに「乾杯!」と声を上げる。オンラインを通じて、ママや客との会話を楽しむ「オンラインスナック横丁」だ。

 「自分が飲みたいとき、ママにいつでも会える安心感があります」。横丁を運営する五十嵐真由子さんは語る。スナックが好きで、全国を飲み歩いて知り合ったママから要望を受け、昨年5月に開設。当初8軒で始まったが、現在は海外も含む64軒に広がった。

 利用者の6割は20~40代の女性で、残りは30~50代の男性。男性が主流のスナックの客層とは異なり、しかも若い。スナックに興味があっても来店しなかった層に、じわりと浸透する。

 2度の東京五輪のはざまで、浮き沈みを経験するスナック。業界の歩みを振り返り、五十嵐さんは言う。「ママの会話力や傾聴力には、コロナで孤独を感じている人の心を癒やす力がある。今回の東京五輪を転換期として新しいファンを開拓し、スナックの灯をともし続けていきたい」

(山下真)

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