世界遺産登録 沖縄・奄美の自然を未来へ

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産が国内に二つ増えることが決まった。これで文化、自然の計25件になる。

 鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄島北部と西表島の4島に及ぶ計約4万3千ヘクタールは自然遺産に、「北海道・北東北の縄文遺跡群」は文化遺産に登録されることになった。

 九州で暮らす私たちにとってうれしいのは、1993年の屋久島(鹿児島県)に続き、南西諸島の豊かな自然が再び世界的評価を得たことだ。

 太古に大陸から分かれ、島々が形成される過程で多くの動植物が独自の進化を遂げた。イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナといった絶滅が危ぶまれる固有種が数多く生息する。保全に尽力してきた地元の人々や環境保護団体の粘り強い努力をたたえ、多様性に満ちた自然を未来に引き継ぐ大きな契機としたい。

 ユネスコが「顕著な普遍的価値」を認めた島々の自然は、人の暮らしのすぐそばにある。

 希少種が車にひかれる事例は後を絶たない。アマミノクロウサギは人が持ち込んだ外来種のマングースに襲われ激減した。近年は野生化したネコによる被害も深刻になっている。生態系のバランスは極めて繊細で、人々の軽はずみな行動が大きなひずみを与えかねない。常に留意すべき大切なことだ。

 遺産登録に向けてまず急ぎたいのは観光客増加への対応だ。

 屋久島では登録直後から観光客が殺到し、登山道の荒廃などが深刻化した。観光が環境や地域社会に打撃を与えるオーバーユース(過剰利用)は世界遺産につきまとう難問である。登録地の自治体は各国の先行事例などを参考に、入域人数制限といったルール作りに知恵を絞ってほしい。遺産登録の主眼は環境を守り、継承することだ。肝に銘じなければならない。

 あくまで4島で一つの世界遺産である。2県の自治体、研究者、環境保護団体などが緊密に連携し、情報交換しながら保全対策を進めることも肝要だ。

 希少な動植物を狙う不法な捕獲、採集も後を絶たない。高値で取引する業者もいるといい、警戒を高めることは必要だ。

 ユネスコの諮問機関の勧告により沖縄本島の米軍訓練場跡地も対象に含まれた。空包などの廃棄物が残っているという指摘もある。国は現地を改めて調査し原状回復に努めるべきだ。

 今後、自然遺産の国内有力候補はなく、これが最後の登録になるとの見方がある。それでもかけがえのない自然は日本各地にまだ残る。生物多様性の重要性を見つめ直し、自然保護の機運を高めていきたい。

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