ワクチン頼みの果ての感染爆発 国民に危機感伝えきれないリーダー

 「8月末までの間、今回の宣言が最後となるような覚悟で政府を挙げて全力で対策を講じていく」。緊急事態宣言の拡大を決定した30日夜の記者会見で、菅義偉首相はこう説明した。だが、ワクチン接種の進展により、デルタ株の「第5波」を食い止められるとの楽観シナリオは崩壊。低姿勢で感染防止への協力を重ねてお願いしても説得力を欠き、国民になかなか響かない。後手のコロナ対応が首相の求心力をじわじわとそぎ、自民党総裁選と衆院選を前に正念場が来た。 (久知邦、前田倫之、大坪拓也)

 午後7時、紺のスーツで会見場に現れた首相は普段通り、淡々とした表情で約15分間にわたり現状認識を披露した。

 「ワクチンこそがまさに決め手。さらなる効果を発揮するまでの今しばらくの間、一人一人が高い警戒感を持って感染予防を徹底し、慎重な行動を取るようお願いする」「重症化リスクを7割減らす画期的な治療薬が今月、承認された。50代以上の患者、基礎疾患のある方に積極的に供給していく」

 東京五輪・パラリンピックに関して、国民に自宅でのテレビ観戦を呼び掛けたが、約70分間の会見で新たな防疫作戦の打ち出しはなし。首都圏に発し、地方に拡大しつつある感染爆発を招いた自らの責任を問われても、「この波をできるだけ早く収めることが私の一番の責任だ」とかわすだけだった。

 政権は今月8日、「先手の予防的措置」として東京都に緊急事態宣言発出を決め、首相も「ワクチンの1回目接種が(国民の)4割に達すれば感染者の減少が明確になる」と自信をにじませていた。23日には五輪が開幕。このころまでは、官邸内に「感染者が増えても重症者は増えていない。『第5波』は乗り切れる」との楽観論が漂っていたものの、東京の新規感染者の上昇カーブはさらに鋭角になり、やすやすと3千人を突破して全体が暗転した。

 原因は、首相の隣に立つ政府分科会の尾身茂会長が30日、「火事が燃え盛りつつある」と比喩したかつてない恐ろしい感染スピードだ。分科会のあるメンバーは、最大の危機の到来が国民に正しく伝わっていないとして「歯がゆい」と憤る。連日、首相のツイッターには「華麗な技に感銘を受けました」「おめでとうございます!」など、五輪で金メダルを獲得した日本選手への祝意が投稿されている一方、コロナ対策に関するものは目立たない。

 安倍晋三前政権時から、ウイルスの勢いをどの程度抑え込めているかが内閣支持率の数字をほぼ決めてきた。報道各社の世論調査で、菅政権の支持率は7月に入っても最低水準に沈んだまま。9月末に党総裁任期、10月21日に衆院議員任期の満了を控え、「決戦の顔」として自民内を掌握していることが必須の今、首相は「感染がもっと増えていけば、本当に政権が吹っ飛ぶ。まさに崖っぷち」(党関係者)に立っている。

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