「第5波」過小評価する政府…医療現場「最も危機的」尾身氏が警鐘

 現在の医療逼迫(ひっぱく)の度合いは、年末年始の「第3波」ほどではない-。政府関係者からは、新型コロナウイルス「第5波」の脅威をこう過小評価する声が聞かれる。ワクチン接種の一定の進展により、65歳以上の新規感染者や重症者が減っていることが理由だ。一方で、40~50代の重症者は増え続け、東京都の入院者数は1月のピーク時に迫っている。専門家は2週間後を見据え、感染爆発のうねりが医療提供体制を破綻させないよう対処せよ、と警鐘を鳴らす。

 新型コロナの特徴として、新規感染者数の増加が1~2週間遅れて医療を圧迫する形で現れることが分かっている。症状の悪化や加療している人の回復には時間を要し、その間に新たな感染者数が積み上がるためで、足元の数字を見ているだけでは医療現場に忍び寄っているリスクを正確に認識できない。

 都によると、入院者数が最多となったのは、1月12日の3427人。7月30日時点の入院者数は3135人とこれに近づき、コロナ患者用に確保した病床(5967床)の52・5%が埋まっている。加えて、30日時点の自宅療養者数は9793人と、前日より千人以上も急増。病院との間をつなぐ保健所がパンクし、自宅で入院を待っていた療養者が相次いで亡くなり、「医療崩壊」が指摘された5月の大阪府の場合、新規感染者数のピークから3週間後に死亡者数が最多となった。

 「これまでのコロナとの闘いで、最も危機的な状況だ」。30日、自ら手を挙げて菅義偉首相との面会に臨んだ政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は、言葉の端々に強い悲観をにじませた。「ワクチン効果」を強調する首相に、専門家の世界から見えている景色を正しく伝えたかったとみられる。

 鍵を握る人の流れに関しても、都内が3回目の緊急事態宣言下にあった5月には、発出から2週間で夜間の繁華街が5割近く下落していたが、今回の宣言では2割減にとどまっている。人々の「宣言慣れ」に、尾身氏を筆頭とする分科会メンバーの焦りの色は濃い。このまま状況が変わらなければ、8月11日には、東京の新規感染者数が4500人に達するとの試算もある。(河合仁志)

 

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