「小さくても勝てる」11センチ高い強敵を圧倒した素根の強さの秘密

 11センチの身長差は関係なかった。162センチの素根が左のつり手を絞り、173センチのオルティスの右手を封じた。

 「組み手で勝たないと技につながらない。小さくても努力すれば勝てると証明したかった」。相手の動きを止めて次々と繰り出す大内刈りと担ぎ技。2012年ロンドン五輪金メダリストで19年世界選手権決勝でも自身と激闘を繰り広げた組み手巧者を圧倒し、掛け逃げを誘って相手への三つ目の指導を引き出した。

 柔道を始めた小学1年生の時、身長169センチの父行雄さんが「輝も将来は背が伸びなくなる」と見越して教えたのが一本背負い投げ。「三倍努力」も身長のハンディをはねのけるために掲げた座右の銘だ。

 高校入学当初、素根はシニアの大会で長身選手に奥襟をつかまれて動きを封じられていたが「身長の低さはハンディじゃなく武器」と相手の懐に入りやすい点を前向きに捉え、担ぎ技の強化をテーマにしてきた。

 “師匠”が女子日本代表で素根を担当する秋本啓之コーチ=熊本県宇城市出身=だ。神奈川・桐蔭学園高在学中に全国高校選手権で本来66キロ級ながら無差別級で大柄な相手を背負い投げなどで倒して優勝。素根は中学1年時にその試合映像を動画投稿サイトユーチューブ」で見つけ「どんなところからでも懐に飛び込めるセンスがすごい」と憧れていた。

 素根が代表に定着して担当するようになった秋本コーチは技に入る前段階として、つり手や背中を使って相手の位置をうまくずらし、担ぎ技に入りやすい位置に誘導する組み手の技術を中心に指導。素根は「奥が深く難しい」と試行錯誤しながらも徐々にこつをつかんだ。組み手の強化はオルティスとの決勝で生き、さらに大内刈りを読んできた相手を普段とは逆の右の一本背負い投げで揺さぶって、試合を優位に進めた。

 まだ21歳。3年後のパリ五輪、さらに2028年ロサンゼルス五輪と柔道女子で日本勢初の3連覇も狙える。「これからも目の前の練習と大会を大事にして、目標とされる選手になれたら」。これまで口癖だった「まだまだ」が取れ、新女王の風格をのぞかせた。 (末継智章)

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