総裁任期2カ月 菅氏は自分の言葉で語れ

 新型コロナウイルスの感染再拡大と東京五輪に世の中の関心が集まる中、菅義偉首相の自民党総裁任期が残り2カ月を切った。早々と再選出馬を明言した菅氏にとって、次の衆院選とも一対となった正念場だ。

 通常国会を閉じた6月中旬、菅氏周辺では「パラリンピック後の9月前半に衆院解散、10月に総選挙。総裁任期は延長し、総選挙後に無投票再選」とのシナリオが語られていた。だが、雲行きは怪しさを増している。

 つまずきは東京都議選での自民の大苦戦だった。獲得議席は過去2番目に少なく、党内からは新型コロナと五輪を巡る政権批判が逆風になったとの恨み節も漏れた。菅氏自身にも「選挙の顔」として疑問符が付いた。

 新規感染者数は今や過去最多の水準にあり、五輪関連の混乱も開幕直前まで続いた。連動する形で内閣支持率は下落し、「危険水域」とされる30%を割り込んだ調査もある。党内では人事の刷新や、ワクチン接種が行き渡るまで総選挙の時期を遅らせる案がささやかれだした。

 内閣を支持しない理由の上位に実行力や指導力への疑問があることも、菅氏には痛かろう。

 他国のリーダーと比べ、菅氏の言葉がメッセージ性を欠くことはコロナ対応の過去の場面でも度々指摘されてきた。「安全安心」といった抽象的で紋切り型の言葉の繰り返しが多く、訴求力がない。国会答弁や記者会見でも言質を取られまいと言葉を濁しがちで「逃げた」という批判にもつながっている。

 現在の感染状況への危機感を訴えるべきだった先週末の会見も、ワクチンの効果を強調するばかりだった印象が否めない。

 「ブレない」ことを信条とするあまり、専門家や周囲の警告を軽んじる傾向も目立つ。観光支援事業「Go To トラベル」の強行や五輪の有観客に固執したことはその典型だ。都合の悪い事実も直視し、耳の痛い意見でも入れる度量が必要だろう。そうすればおのずと言葉に説得力も生まれるはずだ。

 総裁選の日程は8月末までに決まる。緊急事態宣言の期限とも重なり、感染の波を抑えきれるか菅氏が負う責務は重く、間違いなく支持率にも直結する。

 安倍晋三前首相の残任期を継いだ菅氏にとって真価が試される局面だ。国民の協力を得られる対策を丁寧に説明し、コロナ後の経済再生戦略や社会像を示してもらいたい。五輪開催の総括も必要だ。自らの哲学を自身の言葉で語り掛けてほしい。

 一方、自民党内にも活発な政策論争を求めたい。コロナ対応があるとはいえ、菅氏の無投票再選ありきでよいのか。党の在り方も問われる総裁選である。

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