上野英信とヒロシマ 山本敦文

 「追われゆく坑夫たち」や「出ニッポン記」など炭鉱閉山で苦境にあえぐ筑豊を記録した作家、上野英信(1923~87)は22歳の誕生日の前日に広島で被爆した。

 だが、自身が目にしたヒロシマの惨状は詳しく書き残していない。被爆者であることも積極的に語っていない。なぜか。原爆に触れた数少ない作品の一つとされる随筆「私の原爆症」(1968年)にこう書いている。

 <被爆者であることを知られるのが恐ろしいのではない。アメリカ人を皆殺しにしたいという、ついに果たされることのない情念に私がとらわれているのを知られる恐れからである>...

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