入管死亡報告書 「共生」の理念、名ばかりか

 悲劇の背景には、外国人の人権を軽んじる組織的な体質が横たわっていた。再発防止のためには徹底した意識改革と現場の体制見直しが必要だ。

 名古屋出入国在留管理局の収容施設で3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(33)が死亡した問題で、法務省出入国在留管理庁が経緯を検証した調査報告書を公表した。

 全体として「命への危機意識が欠けていた」とする内容だ。これを受け同庁は名古屋局の幹部ら4人を訓告や厳重注意処分とした。入管施設での死亡事案を巡る処分は極めて異例だ。

 ウィシュマさんは2017年に留学目的で来日後、在留資格が切れたまま滞在し、昨年8月に収容された。今年1月から吐き気や体のしびれを訴え、自力歩行が困難になった。それでも仮放免の申請は許可されず、2度目の申請中に亡くなった。

 報告書によると、施設の職員はウィシュマさんの病状を仮放免の許可を得るための誇張と疑っていた。ウィシュマさんが点滴や外部での診療を求めても上司には報告されず、尿検査の数値が悪化しても追加の内科的な検査は行われなかった。

 施設では内科医の診察が週2回、平日にあるだけで、休日の病変などに対応する体制がなかった。そうした状況も重なり、ウィシュマさんの病状が深刻との認識は組織として把握、共有されていなかった。今回の調査では、死因となった病名の特定もできなかったという。

 遺族の怒りと無念は察するに余りある。この収容施設は刑罰の場ではない。国外退去や仮放免などの手続きが整うまでの待機場所だ。身柄は拘束するが、それによって施設側は命を預かる責任を負う。この点も含めた人権意識の希薄さは入管行政全体に通底する問題だろう。

 報告書は再発防止策として、入管庁全職員の意識改革、医療体制の強化、仮放免判断の適正化などを挙げた。同庁はこれらの具体策を早急に示すべきだ。

 先の国会では、不法滞在者の国外退去の厳格化を柱にした政府の入管難民法改正案が批判を浴び、事実上の廃案に追い込まれた。そもそも入管行政には難民認定に消極的な姿勢に加え、出入国に関わる決定・裁量権を当局が独占し、外部チェックが利かない密室性の問題も指摘されてきた。今回を機に抜本的な改革に取り組んでほしい。

 外国人は日本社会の随所で活躍し、もはや経済の維持にも欠かせない存在だ。彼らの人権を守るのは私たちの暮らしの基盤を守ることでもある。「共生」の理念を名ばかりにしてはならない。入管行政への監視と外国人への支援の輪を広げたい。

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