流域治水に武田信玄考案の霞堤「地域での合意形成必要」

 激甚化する水害の減災策として、堤防に切れ目を設ける戦国時代の手法「霞堤(かすみてい)」が再評価されている。明治時代以降の河川整備に伴い全国で姿を消したが、国土交通省が約50年ぶりに関東地方の那珂川と久慈川で新設する方針を決定。九州では宮崎の五ケ瀬川流域や福岡県の筑後川流域などに残っており、流域全体で被害を軽減する「流域治水」の方策として、先人の知恵を見直す動きが出ている。

 霞堤は武田信玄が考案したといわれる。堤防に開口部を設けて周辺の田畑に誘導することで川を流れる水量を減らし、下流の堤防決壊を防ぐ仕組み。田畑を“遊水池”にして集落を守り、洪水が解消されれば水が自然と川に戻っていく。

 那珂川や久慈川では2019年の台風19号で堤防が決壊。計約4800ヘクタールが浸水し、約3400棟が被害に遭った。国直轄のダムや遊水池がない上に、下流部の勾配が緩く、洪水時の被害が大きくなりやすいため、関東地方整備局は20年1月、那珂川と久慈川に霞堤を計4カ所整備すると発表。周辺に民家が立つ地域もあるため、地元自治体とともに移転を進めながら、24年度までの整備を目指す。

 同整備局常陸河川国道事務所の堀内輝亮副所長は「激化する水害に対応するため、温故知新で計画に盛り込んだ。住民に丁寧に説明して進めていく」と語る。

 霞堤が残る地域で被害を軽減させた実例もある。宮崎県延岡市の五ケ瀬川支流の北川には霞堤が6カ所あり、16年9月の台風16号では浸水面積が約340ヘクタールに上ったにもかかわらず、被害を24棟に抑えた。国交省は温暖化を踏まえて現在見直しを進めている五ケ瀬川水系の河川整備基本方針の変更案でも霞堤の保全を明記。国交省河川計画課の斎藤正徳課長補佐は「川の外に逃がした水がクッションとなり、堤防から水があふれた際に押し寄せる水の勢いを弱める効果もある。減災効果は大きい」と説明する。

 ただ、霞堤を活用するには周辺地域への影響も考慮する必要がある。さが水ものがたり館(佐賀市)の荒牧軍治館長は「地域で合意形成し、戦略的に洪水を受け止めることができるエリアをつくることができれば、有用な流域治水策となる」と話している。

 (御厨尚陽)

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