終戦の日 戦争は「無残で無意味」だ

 昭和を代表する映画スター、三船敏郎さん(1920~97)は76年前の8月15日を九州で迎えている。25歳だった。

 陸軍の隈庄飛行場。現在は熊本市南区城南町の一角になる。

 特攻隊の基地だった。

 召集されて6年の三船上等兵は、まだ声変わりもしていない少年航空兵の教育係。出撃前日にあいさつに来る少年兵にすき焼きを作り食べさせた。

 二度と戻らぬ少年兵がいざ飛び立つ際、三船さんは伝えた。「最後の時は『天皇陛下万歳』なんて言うな。恥ずかしくないから『お母ちゃん』と叫べ」

 実家が写真館だった三船さんは少年兵の遺影となる写真も撮った。彼らを特攻に送り出し続けた心中を、松田美智子さんの「サムライ 評伝 三船敏郎」(文芸春秋)はこう記す。

 「国民を犠牲にして争う戦争の残酷さ、無残さ、無意味さ、そして無常を痛感し、どこにぶつけることもできないまま腹の奥底に深く痛みとともに貯め込んでいたのではなかったか」

 8月15日に終戦を知った三船さんは「ざまあみやがれ!」と叫んだという。後に「世界のミフネ」と呼ばれる名優の名もなき時代の一幕である。

■「カミカゼ・ドローン

 爆弾を積んだ飛行機などで敵に体当たりする「特別攻撃」、通称「特攻」。「神風特攻隊」などと美名で呼び、人間そのものを武器とする。旧日本軍の愚行の中でも狂気の極みだろう。

 私たち日本人が不戦を誓い、戦争の本質を語り継ぐ上で、忘れてはならない事実だ。

 ところが世界では自爆攻撃一般を今や「KAMIKAZE(カミカゼ)」と呼ぶ。2001年の米中枢同時テロで旅客機がビルに衝突した際も「カミカゼ・アタック」と表現された。

 自らの命の犠牲を顧みない点が共通するとの解釈だが、特攻関係者の無念に満ちた証言などを読むと、過激派のテロと同一線上で語ることには日本人として違和感を禁じ得ない。

 そしてカミカゼは今、新たな問題をもたらしている。

 海外の紛争地で無人小型機(ドローン)がセンサーやカメラで標的を認識し、自爆攻撃する例が報じられている。「カミカゼ・ドローン」とも呼ばれる。

 攻撃側に人的被害のない精密な攻撃を可能にしている。コストが米国の最新鋭戦闘機などに比べて破格に安く、資金に乏しい国や組織でも所有でき、有効な武器となっているのだ。

 これに人工知能(AI)を搭載し、人間が全く関与しない状態で攻撃をしている可能性も指摘される。もはや「神風特攻隊」とは無縁の殺人ロボットだ。

■歴史に現在の光当てよ

 この新兵器は国際的な規制が遅れている。このまま技術開発が進み、軍備管理の枠組みに取り込めなければ、私たちの世界の重大な脅威となりかねない。

 技術の発展は武器を変え、戦争の姿も一変させる。ただ戦争の本質として三船敏郎さんも感じただろう「残酷さ、無残さ、無意味さ」は変わらない。

 戦後生まれが人口の8割を超えている今日、あの戦争の歴史に常に現在の光を当てながら、見つめていかねばならない。

 広島や長崎の被爆者支援、沖縄の基地の過重負担、中国や韓国との関係など現在の課題の多くは先の戦争に端を発する。

 特攻に話を戻そう。福岡県の大刀洗平和記念館、鹿児島県の知覧特攻平和会館、沖縄県立埋蔵文化財センターと九州大浅海底フロンティア研究センターが進める合同企画が興味深い。

 沖縄沖に沈む米駆逐艦と特攻機のエンジンなどを最先端技術で可視化した。特攻部隊の編成から攻撃の瞬間までを解き明かし、隊員の日記なども4館それぞれに紹介する。特攻の現実を立体的に学べるのではないか。

 戦争の歴史から新たな気付きを探る夏にしたい。

PR

開催中

秋の古本まつり

  • 2021年10月13日(水) 〜 2021年10月26日(火)
  • ジュンク堂書店福岡店 2階「MARUZENギャラリー」特設会場

PR