雲仙老舗ホテル止まった泉源…予約100組に断りの電話

 九州を襲った記録的な大雨で、歴史ある観光地・雲仙温泉(長崎県雲仙市小浜町)が甚大な被害を受けている。崖崩れ現場では行方不明1人の捜索が続く一方、温泉街の中心部で起きた別の土砂崩落は泉源を直撃し、宿泊施設の一部は休業を余儀なくされている。かつてない試練に直面している。

 20日午後、晴れ間が広がったものの、ホテルや土産物店が並ぶ温泉街は閑散としていた。雲仙岳では11日未明の降り始めから20日夕までの総雨量は1293・5ミリに達した。「夏休みなのに、こんな寂しい風景は記憶にない」。創業80年のホテルを運営する大女将(おかみ)は嘆く。

 長崎県内に大雨警報が出された13日夕、温泉神社近くで崩落が発生。近くの土産物店に土砂が流れ込んだ。翌日からはホテルの温泉水が出なくなり、修学旅行客を含め今月末まであった約100組の予約に全て断りの電話を入れた。

 「白濁の硫黄分たっぷり、源泉掛け流しがうちの生命線ですから」と大女将。傷んだ泉源の修復の見通しは立っていない。調査した環境省九州地方環境事務所は「あらゆる方法を関係機関と協議していく」。雲仙温泉観光協会によると20日現在、12旅館・ホテルのうち温泉水が出なくなるなど5施設が休業している。

 温泉街の中心部から北側にかけての斜面では複数の亀裂も見つかった。崩壊のリスクも否定できないとして、住民約100人が体育館などに避難し、19日からは市が手配したホテルに滞在している。

 雲仙地区の宿泊者数は年間約30万人。新型コロナウイルス感染拡大で最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月ごろは例年の数%にまで落ち込んだ。それからもコロナ禍の波に翻弄(ほんろう)されたが、春からは避暑地としてにぎわう夏に向けて少しずつ回復していたところだった。観光協会の担当者は「非常に厳しい。大雨で温泉が大打撃を受けたというイメージが広がらないか心配」と話す。

 復興に向けた動きもある。酒店を営む本多善彦さん(66)は久しぶりの青空が広がった19日、大雨で休んでいた店を再開。一帯は1934年に指定された最初の国立公園の一つで、普賢岳噴火などの危機も乗り越えてきた。本多さんは言った。「お客さんは来ないでしょうが、雲仙は元気ですよと、伝えたくてね」

(佐藤倫之、松永圭造ウィリアム)

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