【寄稿】地方衰退、海外交流で打開を 「一極集中」韓日の共通課題 駐福岡総領事・李熙燮氏

 日韓の地方連携は深まるのか。在福岡韓国総領事館のソプ総領事が西日本新聞に寄稿した。

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■地方消滅報告「韓国でも大きな反響」

 韓日両国は出生率の低下や高齢化による人口減少、首都圏集中の加速により地方消滅の危機感が高まっている。地方からの人口流出を抑制し、活力ある地域社会をつくっていく上で、地方創生は地方の存亡にかかわる問題となっている。

 2014年の増田寛也元総務大臣による地方消滅報告書は、人口減と東京一極集中が地方消滅を招き、その行く末は東京消滅、日本消滅であるという警鐘を鳴らして、日本列島に衝撃を与えた。増田リポートのショックは人口減と首都圏集中現象が日本より一層深刻な韓国社会でも大きな反響を呼んだ。

 リポート発表後、当時の安倍晋三政権は「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、地方創生担当大臣を新設して地方創生の第1期となる5カ年総合戦略を推進した。その結果、地方創生に成功する模範事例も表れた。しかし、人口減と東京一極集中傾向は依然として続いている。地方自治体間の人口争奪に伴う競争によって疲弊する自治体も出てくるなど、地域間格差の拡大を招くゼロサムゲームの様相さえ呈している。

 福岡市は、日本の他の地方都市と同様に若年層の東京圏への転出といった慢性的な問題を抱えているものの、人口は「福岡一極集中」と言えるほどの九州各地からの人口流入によって増加傾向にある。しかし、少子高齢化や九州全体の人口減が加速するにつれて福岡都市部への人口流入も減少傾向に向かい、福岡市も30年代半ばより人口が減少すると予想されている。そうした中、福岡市は魅力ある仕事や雇用の機会を創出し、新たな人口の流れを生み出すことによって福岡都市圏の活力を維持・向上させるという目的を掲げて努力している。

 もとより地方創生とは、長期にわたって地道に継続することが求められる至難の国家的課題であることに違いない。しかし低成長時代においては、日本の国内資源の効率的配分を通じた地域発展戦略だけでは、持続可能な地方創生は明らかに限界があるように見受けられる。外部から必要なものを取り入れるアウトソーシングを通じた地方創生戦略など、視野を広げて発想の転換を行う必要があると考える。

2014年9月、「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掛ける石破地方創生相(左)と安倍首相。右は菅官房長官=東京・永田町
2014年9月、「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掛ける石破地方創生相(左)と安倍首相。右は菅官房長官(いずれも当時)=東京・永田町

■海外都市との交流「必要不可欠」

 具体的には、海外の自治体との交流や協力の拡大を通して働き手や留学生、観光客を呼び込み、市場開拓と未来型産業の創出につなげることで地域活性化の突破口をつくる必要がある。とりわけ青少年や大学生の交流の活性化、大学や企業間の相互教育・研修と人材採用の拡大などを通じ、未来を担う若年層を中心とした新たな人口の流れをつくり出すことが地域の活力を呼び起こす糸口になるだろう。

 こうした取り組みで、日本国内における自治体間の相互けん制や非効率的な競争を緩和し、東京というブラックホールに吸い込まれるのを食い止めるのである。海外の地方自治体との交流は、地方創生においてもはや一つの選択肢ではなく必要不可欠な要素になっていると言える。

 福岡をはじめとする九州は、日本のどの地域よりも韓国との人的交流が活発に行われている。新型コロナウイルス禍以前、九州-韓国間の航空便は18路線週380便、旅客船便は3路線80便が運航し、年間延べ約300万人の人的交流が成り立っていた。18年に九州を訪れた外国人のうち韓国は約5割を占め、九州の地域経済にも少なからず貢献していた。

 その上、九州-韓国間は41の姉妹・友好都市協定が結ばれて活発に交流が行われており、九州の72校の大学と韓国の207の大学・機関の間で各種交流が活発に進行している。

 また、韓日間における代表的な地方自治体間の交流協議体である「日韓海峡沿岸県市道交流知事会議」は1992年の初開催から、一度も中止することなく毎年開催されている。観光、環境、経済交流協力、青少年・スポーツ、少子・高齢化、雇用創出、青年就職交流など多様な分野で共同交流事業を拡大してきた。

■釜山・福岡で「超広域経済圏を」

 さらに、地理的に非常に近く交流も活発な福岡市と釜山市は、2008年に「超広域経済圏」形成に向けた中長期的目標を定め、経済協力協議会をスタートさせた。両市は双方に経済協力事務所を設けるなど交流協力を深めている。このような経済圏が軌道に乗り、一つの超国境広域経済圏としての機能が実現化すれば、長期的には釜山市、蔚山市、慶尚南道による東南圏メガシティと九州間が、超広域経済圏として拡張していくだろう。

 九州・韓国間は1993年に「九州・韓国経済交流会議」(現九州・韓国経済協力会議)を発足させ、双方の資本や技術、人材などの地域資源を補い合い、貿易や投資、産業技術についての交流拡大と地域間交流促進を目的に現在まで毎年開催してきた。コロナ禍にもかかわらず、九州経済連合会と韓日経済協会は、今年11月に熊本にてオンライン・テレビ会議の方式で開催する予定だ。

 このような地方自治体間、機関団体間の交流と同様に、民間の提言機関である「釜山-福岡フォーラム」は、友好や親善の増進と交流協力の裾野を広げている。釜山、福岡両市の財界、言論界、学界、医療、法曹界など各界の地域リーダーが「釜山-福岡超広域経済生活圏」の形成に向けたビジョンを掲げ、地域協力を図るため2006年に発足した。共通の懸案事項のほか、共同発展策および未来の展望について幅広く探る論議によって建設的な提言がなされ、地方自治体交流を促進している。

 18年には、第13回のフォーラムで合意がなされた両国8大学合同のコンソーシアムによる産学連携協力型の「サマースクール」は、地方創生を成し遂げるための若年層の新しい人口の流れを生み出すことができる。大学生交流活性化における非常に意義のある最適な策といえる。フォーラムが交流を再開し、両国関係の改善に向けて先導的な役割を果たすことを期待する。

 

福岡市と韓国・釜山市の産学界リーダーらが議論した「釜山―福岡フォーラム」の会合=2018年9月、釜山市(釜山日報提供)

■「コロナ後の再交流、見据えたい」 

 コロナ禍で人的交流が断絶を余儀なくされる難しい状況にもかかわらず、日韓海峡沿岸県市道交流知事会議は、オンラインやテレビ会議を通じて交流・協力を中断することなく継続している。韓日の自治体間の交流が、地方創生を先導し、促進を図る上で重要な活路になるという強い認識が根底にあるためだ。

 九州は、韓国との交流において観光客の誘致を通じた地域経済の活性化に重点を置いていたため、コロナ禍による人的交流の断絶で最も打撃を受けた地域の一つとなった。これは、観光分野に偏っていた交流・協力分野を多角化し、拡大していくことの必要性を改めて認識する良い機会と捉えることもできる。

 自治体間交流は、両国関係の発展を支える強固な基盤となる。ドイツとフランスの和解と協力による共同繁栄は、延べ2200件を超える地方自治体間の姉妹提携、4300件に及ぶ姉妹大学間相互交流など数多くの地方都市間、未来世代間による交流の蓄積の産物によってもたらされた。韓日両国においても、地方自治体間交流と草の根の民間交流が国民間の相互理解を深め相互依存を深化させることにより、中央政府間の対立・葛藤が緩和され、両国の共同繁栄と未来志向的な関係発展のための盤石な土台になるはずだ。

 昨今、韓日関係が冷え込む中、コロナ禍の影響によって自由に往来できない状況になったことで、両国民が双方の価値と必要性を見つめ直す意味深い契機になったようだ。福岡をはじめとする九州は、韓国との活発な交流関係の特徴を生かし、コロナ後に再開される交流を見据え、日本のどの自治体よりも迅速に準備していくべきである。

 今年10月、日韓海峡沿岸県市道交流知事会議は「地方再生」をテーマに慶尚南道で開催される予定だ。まさに時宜にかなった有益な会議になるだろう。地方創生のためのパートナーという確固たる認識を持つことで、地方自治体間の交流にさらなる拍車がかかることを期待している。地方が生きてこそ国が生きる。(寄稿)

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