構想提唱13年、福岡釜山経済圏の行方は 創業支援や広域連携に活路

 福岡市と釜山市が日韓の国境を越えて巨大な経済圏をつくる-。こんな「超広域経済圏」構想が提唱されたのは2008年。その後、十数年にわたって両国の官民が各種事業を展開してきたが、目標とする「未来型産業の育成」など大きな成果を挙げたとは言い難い。近年は日韓関係の悪化に加え、新型コロナウイルスの影響で構想実現は遠のいている。今後、経済交流は深まるのか。実態を探った。 (釜山・具志堅聡)

 構想は08年就任の李明博(イミョンバク)元大統領が公約に掲げたもので、釜山市が福岡市に提案して動き始めた。未来志向のビジネス協力促進▽人材(海峡人)の育成・活用▽日常交流圏形成▽政府への共同要望-を四つの基本方向とし、経済交流の活性化を目指した。企業誘致の協力や青少年の交流促進、電子マネーの環境づくりなど23の推進事業も決めた。

 「議論や研究から実践に踏み出そうとした意義は大きい」。構想に詳しい九州経済調査協会の加峯隆義総務部長は強調する。ただ「事業は具体的に実現したものも、至らなかったものもある」という。両市の庁舎内への経済協力事務所開設や、経営者が協議するフォーラムの開催などは実施されたが、産業連携で生まれた効果は限定的だ。

 釜山市のシンクタンク、釜山研究院で先任研究委員を務めた琴性根(クムソングン)さんは「地方自治体には組織、予算、権限の三つが不足しており、両国政府の支援がないと厳しい。行政の職員交換などの交流はできたが、実行力のある挑戦的なプロジェクトは難しい」と明かす。

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 08年時と比べて中国や東南アジアの存在感は大きくなり、日韓がビジネスで協力するメリットは相対的に小さくなった。サービス業が中心の福岡市と、製造業が盛んな釜山市では産業構造も異なる。そうした中、福岡市や釜山市で協力を深められそうな分野がスタートアップ業界だ。

 今春、釜山市に創業支援施設「eコマースビジネスセンター」が誕生した。コロナ禍に伴う電子商取引(EC)の拡大を見据え、同市と釜山経済振興院が開設した。商品を保管する小型の物流倉庫や製品撮影室などがあり、ライフケア製品の販売や韓国産楽器の輸出など個性的なスタートアップ企業十数社が入居する。担当者は「輸出支援もしており、グローバル市場を目指している」と語る。

 九州の企業も韓国の新たな企業に注目する。昨年、大韓貿易投資振興公社福岡貿易館が開催したスタートアップ企業を紹介するイベントには、JR九州や西部ガスなどが参加。JR九州の担当者は「技術レベルが高い。当社事業との協業のほか、スタートアップ企業の商品やサービス、技術を取り入れて互いの事業成長に取り組みたい」と話す。

 福岡市を拠点に創業支援を手掛ける「スタートアップゴーゴー」の岸原稔泰代表パートナーによると、福岡にはシード(事業の種)段階から投資できるベンチャーキャピタル(VC)が8社あり、東京に次ぐ多さという。「韓国企業が福岡のVCから資金調達することもあり得る」とみる。

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 ビジネスの芽は他にもある。釜山市、蔚山市、慶尚南道からなる韓国東南圏では、巨大経済圏をつくる「東南圏メガシティ」構想が進む。来年施行の法改正により、複数の自治体が広域で事務処理の必要がある際に「特別地方自治体」を設置できるようになった。来年にも東南圏に韓国初の特別地方自治体が誕生する。

 背景にあるのはソウル一極集中への危機感だ。韓国はソウル首都圏に人口の半数が暮らし、大企業の本社も集中する。地方では若者の流出に歯止めがかからない。東南圏では、域内の交通網の整備や新産業の育成などに取り組む方針だ。

 釜山研究院の朴忠勲(パクチュンフン)研究委員は「東南圏の発展にはさまざまな資源が必要だが、ソウル首都圏に優位性があるため確保が難しい。日本も首都圏などに資源が集中しており、距離の近い九州と東南圏が協力すれば互いに成長できる」と話す。

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