"塩おばさん"の衝撃から無の境地へ 「サ活」の深遠なる世界【動画】

サウナワールド ととのう人たち(1)

Risaさん(35)=福岡市 

 いま、サウナが熱い。中年男性が密集して汗を流すむさ苦しい場所? それはもはや過去のイメージ。最近は老若男女を問わず人気が高まり、空前のブームが到来しているのだ。サウナーと呼ばれる愛好家が増えている。深遠なるサウナワールドを伝えようと記者有志が集まり、西日本新聞meサウナ部は誕生した。列島各地のサウナー、サウナ施設の運営者たちを訪ね歩き、汗が出るほど暑く、熱いサ活(サウナを楽しむ活動)の魅力をご紹介する。初回は業界内でも一目置かれる新進気鋭のサウナー、Risaさん(35)の話から-。

サウナ室で十分に体が温まったRisaさん。

 サウナとの出合いは中学生の頃。福岡市内の実家近くに新しくスーパー銭湯ができたのです。当時、流行していた岩盤浴が目当てだったのですが「炭酸泉」や「塩サウナ」といった変わり種もあり、通ううちに温浴という奥深い世界に引き込まれていきました。

 高い湿度が保たれている「塩サウナ」内には大量の塩が盛られています。美容効果を期待して体に塗り込む人が多い中、ひと味違う“ぬし”と出会ってしまいました。いつもサウナ室内で黙々と塩をまいているおばさんがいたのです。たまに塩が飛んできて体に当たるのですがお構いなし。「ここは土俵なのか?」と錯覚するほどの衝撃が駆け巡りました。

(本文とは関係ありません)

 そんなこんなで塩サウナには足が向かなくなったのですが、サウナで体を温めた後に入る水風呂の冷たさは気持ちが良い。思い起こせば幼少時、祖母から「お湯で温まってから水を浴びたらポカポカするけん、やってみんしゃい」と教わりました。温まったら冷やす。サウナーとしての英才教育を幼少時から受けていたのかもしれません。

 «「塩まきおばさん」の洗礼を受けながらも、サウナの世界に足を踏み入れたRisaさん。学生時代から各地の温泉地を巡り、温浴全般を活動範囲とする中で、サウナとの関わりがより深まる出来事があった。舞台となったのは、サウナーたちからあがめられる「西の聖地」だった»

 名高い天然温泉・サウナ施設「湯らっくす」(熊本市)で開かれた催しに参加した際、サウナの本場フィンランドの観光局が認定し、サウナの魅力を広める「フィンランドサウナアンバサダー」に選ばれたのです。認定されたのは2018年12月でした。

 与えられた肩書に恥じない行動をしたい。各地のサウナを放浪するようになりました。19年11月には福岡市の大濠公園にある市美術館の一角で「feel Finland!」というイベントを開催。テントを張り、熱した石に水をかけて蒸気を浴びるフィンランド式の「ロウリュ」を楽しめるテントサウナを用意し、大いに盛り上がりました。

Risaさんは「フィンランドサウナアンバサダー」として、サウナの魅力を発信している

 コロナ禍の前までは月に1、2回は大阪への出張があり、東京を訪れる機会も度々ありました。宿泊地の周辺で大浴場やサウナが充実している施設を探したり、仕事の前後にサウナを楽しんだりして私なりの「サ活」を充実させていました。福岡や九州にも好きなサウナがいくつもあります。

 «サウナ界での地位を揺るぎないものにしたRisaさん。西日本新聞meサウナ部員としてご教示いただきたいのは、Risa流の楽しみ方だ。「サウナ-水風呂-休憩」のサイクルを繰り返す入り方が一般的に主流とされているが…»

 体が冷えやすい体質なので、まずゆっくりと湯船に漬かって体を温めた後、サウナに入るのが私の流儀。それでも温まり方が足りないと感じれば、水風呂に入らず休憩に進んで1セット目を「助走」にしてしまう手もあります。ウオーミングアップで徐々に体をいい状態につくり込むのです。

 温まったら水風呂が大事です。かけ水で汗を流した後、誰もいない水風呂の「無の状態」に挑みたい。火照った体が冷たい水を中和し、水の中で“羽衣”といわれる薄い膜ができます。水風呂が天然水なら文句なし。水と体がシンクロナイズして「ハァ~ッ」という状態に至ります。これ、冗談抜きに良いですよ。

 水風呂の後に目をつぶって寝っ転がっていると、浮遊感のような境地に達することがあります。多くのサウナーが口にする「ととのった」状態です。言葉でうまく表現できないのですが、「ああ、来る!」と予兆をじわりと感じ、そのまま「これいくなぁ…」と思ったらパッと目を開けます。

 «サウナ部員としてはここは聞き逃せないひと言である。せっかく「ととのった」のに、目を開けるのはどうしてですか?»

 私の場合、長い時間「ととのった」状態でいると気を失ったり、泡を吹いたりする可能性があると思うからです。目を開けることで没入しすぎないようにしています。フィンランドサウナアンバサダーたる者、サウナで倒れて周囲に迷惑をかけるわけにはいかないのです。

 といってもコロナ禍で渡航計画がキャンセルになり、まだフィンランドには行ったことがないのですが。

フィンランドの首都・ヘルシンキのサウナ(左)と街並み=2018年​​​​​​

 «まさにアスリートに匹敵する心技体の極み。「サウナなでしこ」とでもお呼びしたくなるが、かつてサウナでの謎マナーで怒られた経験もあるとか»

 JR博多駅近くの施設で、貸し切り状態でした。サウナ室で蒸されながらあぐらをかいていると、後から入ってきた女性から「足を開かないで!」と強く注意されました。もちろん、隠すところはきちんと隠していましたよ。高温空間でも足は比較的温まりにくいため、下半身が温まりやすいあぐらは決して悪い姿勢ではないのになぜ? そもそもあなたは誰?

業界でも一目置かれるサウナーのRisaさんはこれまで、さまざまな愛好家たちと出会ってきた

 いろんな疑問が浮かびますが、こうした出来事は日常茶飯事。サウナーは十人十色で面白いなと思えるようになりました。いろんな人を包み込むのがサウナなのです。今となっては「塩まきおばさん」を恐れていた過去の自分に教えてあげたいくらいです。

 «あくまで寛容なRisaさん。ギスギスした世の中、サウナは人間を育てるということか。さまざまな経験を重ね、今では由緒正しい「冷泉サウナ」をプロデュースするまでになった»

 今年6月からは縁あって福岡県豊前市のマーケティングアドバイザーを務めています。市内には冷たい水が湧き出す「はたのれいせん」があり、2種類のサウナが男女日替わりで楽しめる「畑冷泉館」が8月末までの夏季限定で営業します。樹齢約830年の大楠の根元から湧き出す15度の水は「九州三名水」の一つです。

2種類のサウナを男女日替わりで楽しめる畑冷泉館は、川のせせらぎがBGMとなる=福岡県豊前市

 古来、修行する山伏や神職がみそぎをしていたと伝わり、一般人の立ち寄りができなかった神聖な場。明治時代の1903年、露天浴場になりました。現在は「畑冷泉館」となり、肌当たりの良い冷泉が水風呂です。可能性を感じるだけに、夏以外にもサウナイベントを開きたいと妄想中です。もっと修行を積み、サウナ界をより熱くしたいです。

(西日本新聞meサウナ部・布谷真基)

(左)1957年ごろの畑冷泉(右)サウナーのRisaさん。その日の体調や施設のつくりによって「楽しみ方は毎回変わります」

 【ととのう】サウナ、水風呂、休憩のサイクルを繰り返すことで交感神経と副交感神経がうまく切り替わり、休憩中に深いリラックスが得られること。「浮遊感」「多幸感」などと表現され、人によって感じ方は異なるが、ととのうことが心身を良いコンディションへと導いてくれる。サウナー(愛好家)はそれぞれに適した時間配分や、サイクルを繰り返す回数を見いだしている。漢字では「整う」「調う」のどちらも当てはまるため、平仮名で表記されることが多い。

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