進まぬ核軍縮~米国からの報告(中) 【逆行】軍需産業が研究担う

西日本新聞

米連邦議会は2014会計年度予算で、国家核安全保障局が提出した核兵器関連予算の増額を認めた=米ワシントンの連邦議会議事堂 拡大

米連邦議会は2014会計年度予算で、国家核安全保障局が提出した核兵器関連予算の増額を認めた=米ワシントンの連邦議会議事堂

 「これは米国がまだ2万5千発の核兵器を保有し、予算規模が最高水準だった1985年に匹敵する」

 昨年4月、2014会計年度の予算審議が行われた米上院歳出小委員会の公聴会。委員長のダイアン・ファインスタイン氏(民主党)はこう指摘し、核弾頭の開発や管理を所管するエネルギー省・国家核安全保障局(NNSA)が核兵器関連予算として約82億ドル(約8200億円)を要求していることを強く非難した。

 財政難で国防費すら削減される中、オバマ政権としての本格予算となった11会計年度以降、NNSAの要求額は増加。1月に成立した14会計年度予算は、要求額を下回ったものの前年度比3・5%増の約78億ドルだった。当面、要求額のアップは続くとみられ、「核なき世界」の追求と明らかに矛盾する。

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 その理由は単純だ。ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の批准を米上院が10年に承認した際、消極姿勢だった共和党議員を説得するため、政権が現存核兵器の耐用年数の延長を図ったり、精度を向上させたりする「近代化予算」確保を約束したためだ。さらに、近代化を担うロスアラモス(ニューメキシコ州)、ローレンス・リバモア(カリフォルニア州)など「国立研究所の運営を、議員に影響力を持つ軍需企業が主導していることも大きな要因だ」と、反核団体・ロスアラモス研究グループのグレッグ・メロー代表はみる。

 原爆開発の地であるロスアラモス、そして水爆開発をリードしたリバモアは、米国の核兵器開発の中枢。06年以降は、核施設の建設や戦争などで大きな利益を上げ、政界ともつながりが深いベクテル社を中心にした共同体が運営している。

 国立の施設でありながらそのトップの報酬は国からではなく、この共同体から支払われている。政府と軍需産業が一体となり、「軍産複合体」を形成してきた米国。核開発の拠点までが事実上、軍需企業の支配下になっているように映る。

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 約200発が欧州に配備されているとされる核爆弾B61。「最も性能が安定した核兵器だと立証され、さらなる研究費は不要」(全米科学者連盟の核兵器専門家ハンス・クリステンセン氏)とされるが、14会計年度の近代化関連予算では、11会計年度の要求ベースの約1・7倍、約5・4億ドルが認められた。

 クリステンセン氏は「B61などの近代化を際限なく進めれば、保有国に核軍縮への誠実な努力義務を課した核拡散防止条約(NPT)の理念に逆行することになる」と警鐘を鳴らす。

 「利潤追求に加え、軍事機密や最新技術にアクセスできることから、軍需企業は可能な限り研究所で開発を続けるだろう。国の政策もその影響を受ける」とメロー氏。それは核を保有していない条約加盟国の反発も招き、核不拡散体制を大きく揺るがしかねない。


 核開発を担う国立研究所の民間運営 ロスアラモス、ローレンス・リバモア両国立研究所は、カリフォルニア大学が運営してきた。しかし、不祥事が相次いだため米政府は2005年、運営契約の入札制度を導入。現在は民間中心の共同体が運営している。


=2014/03/28付 西日本新聞朝刊=

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