進まぬ核軍縮~米国からの報告(下) 【暗礁】CTBT 見えぬ道筋

西日本新聞

オバマ政権の下での米上院のCTBT批准の可能性は「日に日に低くなってきている」と語る米軍備管理協会のダリル・キンボール会長=米ワシントン 拡大

オバマ政権の下での米上院のCTBT批准の可能性は「日に日に低くなってきている」と語る米軍備管理協会のダリル・キンボール会長=米ワシントン

 「『67票を取る旅』は、最初の一歩を踏み出さなければ始まらない」

 昨年11月、米首都ワシントン。有力シンクタンク・米軍備管理協会のダリル・キンボール会長は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准問題を担当する政府高官らとの非公式会合で、強く行動を促した。

 67票は批准に必要な上院(定数100)の3分の2の票。現在、上院は与党・民主党系が55人、野党・共和党系が45人。批准実現には超党派の支持が必要だ。

 会合でキンボール氏は、政府が一丸となって議会を説得する態勢づくりのために、関係省庁を束ねるCTBT特別調整官を大統領が指名すべきだとあらためて提案。しかし、この日も前向きな回答はなかった。

 オバマ大統領が2009年4月、チェコの首都プラハで「CTBTの批准をただちに、積極的に追求する」と宣言してから間もなく5年。この間、「本格的な議会対策は行われず、一歩も前進していない」。キンボール氏はこう言い切る。

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 核の拡散防止に大きな効果が期待されるCTBTは1996年に国連総会で採択されたが未発効だ。発効には研究・発電用の原子炉を持つ44カ国すべての批准が必要で、このうち米国を含む8カ国が未批准なためだ。ただ、米国が批准すれば、核保有国の中国、インド、パキスタンなどにも波及し、発効に向けて大きく前進するとみられている。

 米上院はクリントン政権時代の99年、批准案を一度否決した経緯がある。当時、共和党を中心にした反対派は(1)他国が秘密裏に核実験を行った際、探知できるのか(2)米国は核実験をせずに、核兵器の性能や安全性を維持できるのか-などと疑問視していた。現在のオバマ政権は技術力の向上でクリアできるとの立場だ。

 しかし、2010年中間選挙で民主党の上院議席は減少。12年の大統領選挙などを経て与野党対立は深まった。批准は困難となり、「政権内の優先順位は今や低い」と関係者は明かす。

 昨年6月のベルリン演説。オバマ氏はCTBTについて「批准するよう努力する」。プラハ演説にあった「ただちに」「積極的に」などの表現はなく、トーンダウンは明らかだった。

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 CTBTを担当するガテマラー国務次官は2月、14年以降に取り組む軍備管理政策を発表。批准に向け国民や議会に理解を求める作業に取り組むとしたが、「時間的な制限を設けることはしない」と明記した。

 今年11月には中間選挙が行われる。さらに16年には大統領選挙が控えており、残り2年10カ月のオバマ氏の任期中に、超党派の合意を形成するのは難しい。

 「オバマ政権下で批准される可能性は、日に日に低くなっている。それでも態勢を整えて議員の説得に当たり、将来の批准に向けた環境をつくることはできる」とキンボール氏は言う。批准の芽を育て次期政権に委ねる-。それがオバマ氏にとって「現実的な使命」といえそうだ。


 包括的核実験禁止条約(CTBT) 核爆発を伴うあらゆる核実験を禁止。昨年までに183カ国が署名、うち161カ国が批准済みで発効要件国の批准は日本など36カ国。要件国のうち米国など5カ国は署名のみで未批准、北朝鮮など3カ国は署名もしてない。


=2014/03/29付 西日本新聞朝刊=

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