「修羅の国」払拭するために 暴排これからが正念場

落日の工藤会 トップ極刑判決④

 「あんた警察? それとも…」

 記者が北九州市小倉北区のスナックを訪ねると、震える手で空のビール瓶を持つママに出迎えられた。暴力団に襲われたら、その瓶で反撃するつもりだったという。

 店は暴力団の立ち入りを禁じる「標章」を掲げていた。福岡県警による「工藤会壊滅作戦」が始まる前の2013年のことだ。

 福岡県暴力団排除条例が施行された10年ごろから北九州市や周辺では市民が襲撃される事件が続発。標章を掲げた飲食店が入るビルが放火されたり、店の関係者が次々と切り付けられたりした。全国から派遣された機動隊員が至る所で目を光らせ、物々しい雰囲気に包まれていた。

 「次はうちの店か」。飲食店関係者は、おびえていた。そんな街で飲もうという気にならないのも無理からぬことだ。小倉の夜の街は閑散としていた。

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 市民襲撃と時を同じくして、福岡県内のゼネコンや建設業者を標的とした銃撃事件も相次いだ。当時、北九州地区から支店を撤退するか検討したゼネコンもあったと聞く。地元建設関係者は工藤会に近い建設業者から大型工事で「下請け」「孫請け」に入れるよう度々要求されたと証言する。

 ある土木会社は数年前まで「フロント企業」を通じて会に金を納めており、見返りに仕事が受注できることもあったと打ち明ける。「昔はそれで収入が安定していたが、今は敬遠されて仕事が取れない」と話す。

 小倉の繁華街でスナックを経営する女性は「ヤクザを頼ることに罪悪感はなかった」と振り返る。かつて、一部の飲食店や建設業界が暴力団と「持ちつ持たれつ」の関係にあったことは確かだろう。ただ市民襲撃が頻発するようになり、事件はなかなか解決しなかった。地元の人たちは「暴排運動への協力を拒むのは難しいが、暴力団からの報復も怖い」と悩んでいた。

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 「修羅の国」と、やゆされる状況を一変させたのは県警による壊滅作戦だ。そして、20年2月、会の象徴だった小倉北区の本部事務所が撤去されたことで、その流れは決定的になった。

 小倉の中心地はいま、局地的に「建設ラッシュ」とも呼べる状況にある。JR小倉駅に近い住宅地ではマンションが次々と建ち、新しい住民が入居している。

 地場の不動産業者は「昔は大手デベロッパーが開発に及び腰だったが、今はどこも前掛かりだ」と驚く。

 市内の公示地価を見ると、17年に商業地が24年ぶり、20年には住宅地も21年ぶりに上昇に転じ、新型コロナウイルス禍の影響を受けた21年もほぼ横ばいを維持している。

 夜の街で組員風の男を見掛けることもめっきり減った。標章制度が始まった12年以降、北九州地区の掲示率は50%台だったが、今年6月末には73%にまで上昇した。暴力団と距離を置く店が増えている。

 市幹部は「治安回復による経済効果は大きい」と指摘する。人口減少と高齢化が深刻な北九州市にとって、一筋の光明にも見える。

 だが工藤会が弱体化しているとはいえ、まだ400人以上の構成員、準構成員がいる。ここで気を抜けば「元のもくあみ」となる恐れもある。暴排運動の矢面に警察が立つのは当然だが、行政や市民も暴力団とどう向き合うのか問われている。北九州市がより良い街になるためには、これからが正念場だ。

 (工藤会トップ裁判取材班)

 =おわり

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