大学入試改革 失敗の検証が欠かせない

 受験生やその家族を不安に陥れ、混乱を広げた罪はあまりにも重い。文部科学省を中心に政府全体で猛省すべきだ。

 大学入試改革の二枚看板だった「英語の民間試験活用」と「国語・数学の記述式問題」の導入について、文科省が正式に断念すると発表した。

 事の発端は、政府の教育再生実行会議が2013年に「知識偏重の1点刻みの大学入試」から脱却を求めるとして、改革を提言したことだ。

 翌年の中教審の答申などを経て、大学入試センター試験は今春から「大学入学共通テスト」に改変された。英語だけでなく国語・数学の記述式の採点も民間に委託する計画で、全国一斉の巨大試験に民間の力を大胆に活用する改革と注目された。

 ところが、具体的な実施計画が明らかになるにつれ、受験生や教育関係者から批判や懸念が噴出する。

 「お試し受験」が可能な民間試験は、家計にゆとりのある受験生が有利になる。目的も内容も異なる複数の民間試験の結果を公平に比較評価できるのか。記述式解答を正確に評価できる質の高い採点者を十分に確保できるのか-。いずれも、入試に欠かせない「平等と公正」に関わる懸念ばかりである。

 結局、国は今春の共通テストの目前で、民間試験活用と記述式問題導入を見送らざるを得なくなった。さらに、将来的な実現可能性を検討した有識者会議が今夏まとめた提言で、公平性や採点の正確性への懸念から「実現困難」との結論に達した。当然の判断と言うほかない。

 時代の変化に合わせ、入試も変わる必要はあろう。表現力などを測る記述式問題や「話す」「書く」を含む英語の4技能を評価する意義は有識者会議も認めている。

 文科省は、記述式や民間試験を各大学が個別入試で活用するよう促す通知を出した。民間試験活用については、居住地域や経済状況で受験生の間に格差が生じる恐れはある。文科省は検定料減免など、公平な入試の環境整備に取り組むべきだ。

 有識者会議の提言は、改革を進めるに当たって「理念や結論が過度に先行し、実務的な課題の解決に向けた検討が不十分にならないようにする必要がある」と明記した。政府と文科省への痛烈な批判であろう。

 一連の改革論議は、民間活用の「結論ありき」で進んだ印象が拭えない。なぜ改革は挫折したのか。国は徹底的に検証し、結果を公表すべきだ。教育再生実行会議が方向性を示し、中教審などで具体化される制度改革は多い。政策の決定過程をいま一度問い直す必要がある。

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