1人送迎、基準も監査もなし…通園バスの浮き彫りになった「穴」

 福岡県中間市の私立双葉保育園に通う男児(5)が送迎バス内に取り残され熱中症で死亡した事故から29日で1カ月。園には事故翌日から転園や退園の希望が相次ぎ、市が転園先を調整するが、待機児童もおり難航している。経営難による園の存続も懸念される中、安全に不安を抱きながらわが子を預ける保護者は多く、一刻も早い再発防止策が求められている。

 「園長は言い訳ばっかり。説明に納得がいかなかった」。4歳の息子を通わせていた同市の30代女性は通園をやめ、9月から市内の幼稚園に通わせることにした。亡くなった男児の担任から欠席の確認がなかったことで「男児が登園していると思った」などという弁明に不信感が募った。

 市によると、これまでに14人が退園、一時は40人が転園を希望するなど、全園児の3割に上った。転園希望に関しては待機児童も数人いるため、転園先が決まったのは約半数。残る半数は通いながら認可保育園の空きを待つ。

 「仕事があるので預けざるを得ない」「保育園を変えたいが、すぐには見つからない」。保護者のわだかまりは大きく、市は専用電話を設け、心理的ケアや相談に追われた。

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 双葉保育園の定員は140人で、7月1日時点で139人が在籍。現在、80~90人は通っているという。

 中間市史などによると、前身は戦前、炭鉱従業員の子どもを預かっていた施設。市内では「老舗」とされ、長く地域の子育てを支えてきた面もあり、子どもの預け先がなくなることを不安視する保護者もいる。保護者会は17日付で、園長と園を運営する社会福祉法人理事長に要望書を提出。遺族への謝罪と賠償、事故の原因究明と再発防止などとともに、園の存続も求めた。

 園の代理人弁護士によると、事故直後は廃園を覚悟していた園長は「存続させてほしい」と話しており、保護者会の要望も踏まえ、弁護士側で再発防止策を練っているという。児童福祉法などに基づく特別監査を行った福岡県と中間市は月末に行政処分を出す方針で、園の指導体制の一新を求める見通しだ。

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 事故は、保育園の安全管理の「穴」を浮き彫りにした。送迎バスに関する国の統一基準はなく、自治体による監査の対象項目にもなっていない。

 双葉保育園は現在、送迎バスの運行を休止。ただ、市内は公共交通機関が少ないこともあって、現在も他の私立の4園が運行している。

 県は事故後、県内の保育所や幼稚園など約2500施設を対象に調査を実施。506施設がバスを運行し、うち20施設が運転手1人の単独送迎を行い、189施設に送迎マニュアルがなかった。108の施設で園児が無断欠席した場合に「保護者に確認連絡をしていない」とした。県は9月中旬にも再発防止のガイドラインを策定する予定。

 「友達と別れたくない」という5歳の息子の希望を尊重し、双葉保育園に通わせ続けることを選んだ30代の母親はこう絞り出した。「園を信頼するしかない」

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 県警は業務上過失致死の疑いで、園関係者から事情を聴いている。遺族の代理人弁護士によると、男児の母親ら家族のダメージは依然として大きく、親族が寄り添って支えているという。

 (菊地俊哉、笠原和香子、上田泰成)

【ワードBOX】中間男児死亡事故

 7月29日午前8時すぎ、福岡県中間市の私立双葉保育園に通う男児(5)=同市=は、40代の園長が1人で運行する迎えのバスに乗車した。同日夕、送りのバスに男児が乗っていないことに気付いた母親が園に連絡。午後5時15分ごろ、園駐車場に停車していたバスの出入り口付近で倒れている男児を職員が発見、その後死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は熱中症で、死亡推定時刻は午後1時ごろ。県警などによると、園長は男児が降りたと思い込み、バスを施錠した。

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