IPCC報告書 温暖化防止は人類の責務

 「数十年に一度」という豪雨が頻発している。九州は今年もまた、多くの住宅街や農地、山林が深刻な水害に見舞われた。私たちは未曽有の気候危機の中にいる。そんな不安を科学的に裏付けるリポートである。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業部会が報告書を発表した。

 膨大な調査研究の蓄積を踏まえ、人間が地球の温暖化を引き起こしたことは「疑いの余地がない」と初めて断定した。前回報告書(2013年)の「可能性が極めて高い」との表現から踏み込み、人類が招いた環境危機だと明言した。危機に歯止めをかける責任が人類にあるというメッセージでもあろう。

 温暖化は地球全体の気候システムに影響を与え、干ばつや大雨といった異常気象を招く。報告書はそれを数字で示した。

 1850年以降の50年と現在を比べると、「10年に1度」とされる極端な高温は2・8倍、大雨は1・3倍、干ばつは1・7倍にそれぞれ増えている。日本で暮らす私たちの異常気象に対する実感は、この数字以上ではないだろうか。しかも温暖化が0・5度進むだけで、異常気象ははっきりと分かるほど増大するという。

 温暖化防止対策の強化は完全に待ったなしと言えよう。

 温暖化対策の国際枠組みパリ協定」は、産業革命前と比べた気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑えることを目標に掲げている。

 今回の報告書は将来の社会経済構造の変化を想定し、五つのシナリオを示した。どのシナリオも20年以内で1・5度に達する可能性が高いという厳しいものだ。ただし、温室効果ガスの排出量が非常に少ないシナリオなら、今世紀末には協定の努力目標を達成する可能性があるという。小さな希望はある。

 それには各国が温室効果ガス排出削減などの対策を強化し、2050年ごろには排出を実質ゼロにすることが不可欠だ。

 日本政府は今年4月、30年度のガス排出削減目標を13年度比で26%減から46%減に引き上げた。達成には、高効率な太陽光発電や水素の活用、二酸化炭素(CO2)を再利用するカーボンリサイクルといった技術革新を一段と加速させる必要がある。石炭火力発電への依存を着実に下げることも肝要だ。

 温暖化が進む以上、当面は異常気象も頻発すると覚悟せねばならない。河川の氾濫、浸水被害を防ぐインフラ整備や、高温に強い農作物の開発など温暖化に対する「適応策」に力を入れることも大切だ。とりわけ、命を守るために地域の防災力の向上を急ぐ必要がある。

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