争点つぶしか窮余の策か「二階外し」でも求心力回復は不透明

 菅義偉首相は二階俊博幹事長を交代させる党役員人事の検討に入った。自民党総裁選(9月17日告示、同29日投開票)を見据えた「二階外し」は、党改革を公約に掲げる岸田文雄前政調会長を意識した争点つぶしの狙いがある。首相は人事刷新で求心力を回復したい考えだが、支持率が低迷する首相の下での衆院選を不安視する中堅若手議員は多く、局面打開になるかは見通せない。

 「私が申し上げてきたのは自民党改革。特定のどなたかを念頭に申し上げたものではない。これからもしっかり訴え続けないといけない」。幹事長交代の報道が駆け巡った31日、首相に機先を制されても岸田氏は記者団に淡々と話した。総裁選への立候補表明で語った「役員任期は1期1年、連続3期まで」という党改革案は、歴代最長の5年にわたって幹事長ポストに座り、権勢を振るう二階氏を意識したものだ。

 「目玉商品をつぶされた。なりふり構わない何でもありの目くらましだ」と首相サイドへの憤りを隠さない岸田派に対し、官邸幹部は「首相は以前から二階氏の党運営に物足りなさを感じ、交代を考えていた」とけむに巻く。首相周辺は岸田氏を「政敵」と見定め、「コロナという見えない敵には苦戦したが、今回は敵が見えている」と総裁選に自信をのぞかせる。

 二階氏の交代を望む安倍晋三麻生太郎両首相経験者からの支援も期待できる。主導権を握っているかのように振る舞う首相だが、実際は「追い込まれた末の窮余の策の面が強い」(政府関係者)。

 党内7派閥のうち5派閥が雪崩を打って支持に回った前回総裁選と異なり、各派の領袖(りょうしゅう)が首相支持を表明しても、「派閥の指図なんて聞かないやつが多い。馬耳東風だ」(派閥幹部)。

 永田町では、首相が岸田氏を人事で取り込むことで、総裁選の回避を狙っているのではと見る向きも。岸田派幹部は警戒感を強める。「そんなことになれば派閥がもたない。羽交い締めにしてでも止める。(岸田氏の)男がすたるよ」

 人事刷新による求心力回復を狙う首相に対しては、「一番辞めてほしい人が居座るのなら何も変わらない」との冷ややかな声も党内にはある。

 総裁選や総選挙を目前にした時期の異例の幹事長交代に踏み切る首相だが、この“奇策”が功を奏すのか。後手に回る新型コロナウイルス対応で危険水域に落ち込んだ内閣支持率が果たして上向くかも不透明だ。 (久知邦、大坪拓也)

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