「終幕宣言」2分、質問に答えず背を向けた首相

 「自民党役員会において総裁選には出馬しないことを申し上げました」。3日、首相官邸。菅義偉首相は記者団に淡々と退陣意向を表明した。「総理、総理、きょうは最後まで答えてください」「説明を放棄するんですか」―。記者の問い掛けには応じず、わずか2分で一方的に取材を打ち切り、執務室へ戻った。“終幕宣言”ですら、国民に丁寧に伝えようとする姿勢は、見られなかった。

 伏線は前日にあった。2日午後4時ごろ、自民党本部で急きょ二階俊博幹事長と会談。「首相が総裁選不出馬を伝える」とのうわさが永田町に広がり、多くの報道陣が駆け付け、緊張が走った。その後、予定通りの出馬意向が伝えられると騒ぎは沈静化した。

 だが3日に一転。首相は「新型コロナの感染拡大を防止するため、国民の命と暮らしを守る内閣総理大臣として専念してやり遂げたい」と退陣を宣言。9月の衆院解散意向を示したことが報道され、翌日早々に打ち消すなど、ここ数日の首相と周辺の混乱ぶりを物語っていた。

 秋田県の農家出身の首相は高校卒業後、上京して町工場に就職。苦学して大学を卒業後、国会議員秘書、横浜市議を経て衆院議員に。官房長官として支えた安倍晋三前首相を継ぐ形で、トップの座をつかんだ。

 携帯電話の料金値下げなど国民目線に近い施策を実施したが、新型コロナ対応に振り回された。ワクチン確保で海外に後れを取るなど「後手」や「説明不足」と批判された。感染拡大は「第5波」に及び、緊急事態宣言を相次いで発出。内閣支持率は低迷の一途で、党内の「菅降ろし」は加速する一方だった。

 首相の小中学校の同級生、菊地洋一さん(72)=秋田県=は「ヨシヒデは故郷の誇り。テレビで見るたびに『まんず頑張れ』と応援していた。菅首相に菅官房長官がいれば、こんなことにはならなかった。残念、ショックだ」と語った。

 「また来週にでも改めて記者会見したい」。この日、自身の弁をそう締めくくり、記者団に背を向けた首相。「国民にメッセージが届かない」と指摘され続けた、首相のこの1年を象徴していた。

(井崎圭)

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