福岡発のネット新サービス 自らの歩み原点、自宅兼オフィスで10年

シン・フクオカ人#51

 〈新たな段階に進むときにぶち当たる壁。乗り越えるのに、助けを借りてもいい〉

 プログラミング初級者らと、そのノウハウを伝える「先輩」(メンター=Mentor)を、ウェブ上で結びつけるサービス「MENTA(メンタ)」の開発者、入江慎吾(39)のオフィスは福岡市の自宅だ。自宅を拠点にするようになって、もう10年になる。

 サービス開始は2018年6月。現在、約3万人まで利用者が増えた。「プログラミングを学び始めた人の9割は挫折すると言われています。書籍を購入しても、独学だとなかなか身につかない。一方で、専門学校に行くと一つの講座で何十万円も必要になる。その間にある需要に応えるサービスです」

 今の位置にたどり着くまでの、自分の歩みがもとになっている。

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 長崎県新上五島町の出身。高校時代にインターネットに出会い、ホームページ作成や島外の大人とつながる魅力にとりつかれた。同じ長崎県に拠点を持つ「ジャパネットたかた」の通販でパソコンを買い、卒業後に福岡市内の専門学校に飛び込んだ。

 ただ、学校では思い描いていたことが学べなかった。「それより実践を積み重ねたい」と目についたウェブ制作会社に電話をかけた。当時入江は金髪。「社会人としてのマナーや服装も、当時はまったく」だったという。「明日から来ないか」。運良く受け入れてくれた会社があった。

 会社には年上の九州大の学生がいた。プログラミングに加え営業、デザインなどの業務をゼロから身につける中、困った時に技術的なアドバイスをしてくれたのがこの先輩。「近くで気軽に聞ける人がいたからこそ」仕事は軌道に乗った。

 2008年ごろ、国内で普及し始めた「iPhone(アイフォーン)」向けのアプリ開発を趣味で始めるようになった。周りでアプリ開発を手がける人は誰もいない頃。作ったアプリのダウンロード数が、全国で上位に食い込んだこともあった。

 「自分で考えたものを誰かが使って感謝される。それで生きていけるなんて最高じゃないか」。入社から10年がたった11年6月、退社してフリーランスに。その時から自宅がオフィスとなった。

 

愛息を抱いて笑顔を見せる入江慎吾さん(撮影・三笘真理子)

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 フリーになると、売り上げ確保のため仕事の数を追い求めざるを得ない。中小企業の顧客管理システムなどを、オーダーメードで全国から請け負う受託開発がメインとなった。

 システム導入により企業経営が効率化し、経営者から感謝される。さらにその後のシステム改修も受注する好循環はできた。ただ「自分で考えたウェブサービスでビジネスをしたい」という思いは強まる一方。18年に受託開発から手を引き、独自のサービス開発に集中した。そこで着想したサービスがMENTAだ。

 利用者が順調に増える中、1人での運営が難しくなり、提携先を模索。20年10月、フリーランスと企業を結ぶサイト運営の企業に株式を売却した。入江はMENTA社長のまま、東京にいる部下10人と利用者の拡大に向けて突き進む。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休業などを強いられる飲食店関係者などからも、プログラミングを学びたいとの声はあるという。

ウェブサイトの「MENTA」の画面

 

 「誰もが知る、福岡発のサービスに育てていきたい。何かを学び始める時の壁を取り除き、1人でも多くの人たちが学び続ける喜びを感じてもらいたい」=敬称略(竹次稔)

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 「MENTA」=https://menta.work

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