高市氏も河野氏も岸田氏も「おもねる」先は安倍前首相

 17日告示、29日投開票の自民党総裁選で、「ポスト菅」をうかがう有力者が安倍晋三前首相への配慮に腐心している。党内最大派閥の細田派(96人)や無派閥の保守系議員にも影響力を保つ安倍氏は、8日に立候補を表明した高市早苗前総務相を推す構えだが、河野太郎行政改革担当相や岸田文雄前政調会長からも秋波を送られている。混戦模様の総裁選レースで安倍氏の存在感が高まっている。 

 この日、高市氏は記者会見で「国家の主権と名誉を守り抜く。私の全てを懸けて働く」と宣言。憲法改正に取り組む姿勢も強調し、1年前に退陣した安倍政権の継承者としての立場を猛アピールした。

 かつて同じ派閥に属し、国家観を共有する高市氏について、安倍氏は周囲に「女性は世界的にもインパクトがある。土俵に上げてあげたい」と漏らしているという。自身に近い細田派内のベテランらにも支援を働き掛け、総裁選に初挑戦する高市氏の援護射撃に余念がないとみられる。

 旗印を鮮明にしたとはいえ、安倍氏への面会は後を絶たない。今週中にも立候補を表明する方向の河野氏も8日、国会内の安倍氏の事務所に足を運んだ。

 関係者によると、河野氏は安倍氏に出馬する意向を伝えた上で、安倍氏との間で開きがあるとされてきた原子力エネルギー政策や皇位継承問題について、総裁選期間中に説明を尽くしていく考えを示したという。

 この会談後、河野氏は記者団に「安全が確認された原発を再稼働していくのはある程度必要だ」と説明。昨夏、自身が言及し保守派の逆鱗(げきりん)に触れた女系天皇容認論に関しても「有識者会議の結果を尊重していくことに全く異論はない」と、いずれもトーンダウンしてみせた。持論を軌道修正することで、安倍氏をはじめ、反対論が根強い党内に意を用いたとの受け止めが広がっている。

 「企業収益、GDPなど多くの数字が上がったのは間違いない」。岸田氏は8日、経済政策の発表会見の場で、安倍氏が推進したアベノミクスへの評価を力説、気遣いを忘れなかった。

 前日には安倍氏が首相在任中、批判を浴びた森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんに関し、「再調査は考えていない」と否定。2日夜のBS-TBS番組で「国民にさらなる説明をしないといけない」としていた発言からブレが生じていると指摘されると「全くない」と語気を強めた。かねて安倍氏の「意中の人」と目されてきた岸田氏だが、安倍氏のアキレス腱(けん)とされる森友問題で不興を買ったとの見方も出ていた。

 既に支持を獲得した高市氏はともかく、党内で「キングメーカー」としての足場を築きつつある安倍氏に対し、関係を強化しておこうとの狙いが透ける河野、岸田両氏。ただ若手の間には「安倍さんにおもねればおもねるほど、改革からは遠ざかる」と嘆く声もある。

(河合仁志、前田倫之、大坪拓也)

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